台湾メディアの風伝媒はこのほど、「地獄から来た料理、日本の古式グルメは美味しくて楽しい!」と題する記事を掲載した。筆者は女性で、夫とともに大分県別府市鉄輪(かんなわ)地区を訪れ、温泉の蒸気を利用した料理を「体験」した。
台湾でも2014年ごろから、円安や日本側の免税措置拡大で、日本旅行への関心が高まった。台湾では戦前の日本統治時代のなごりもあり、日本事情が比較的知られているが、それでも「日本再発見」をテーマにした旅行記事が多く発表されている。
風伝媒の記事はまず、鉄輪地区の人々は江戸時代から、温泉を入浴用としてだけでなく、食品の加熱に用いるようになったと紹介。
筆者が利用したのは「地獄蒸し工房」という施設だ。設備は整っているが「自炊式」で、食材だけでなく「地獄蒸し釜」の利用チケットも券売機で買う。自炊といっても「放置」されるのではなく、係員が蒸し時間について説明してくれたり、釜の蓋を開ける時には「気をつけてください。蒸気が火山の爆発みたいに吹き出しますから」などと注意してくれたと紹介。
文章からは、係員と交流できたという「旅の楽しみ」も伝わってくる。
食べ方は、蒸し上がった食材を醤油や酢を使って食べるだけと紹介。「味には期待していなかった。まさか、こんな単純な料理方法で、豚肉や鶏肉がとてもおいしくなるとは。特に素晴らしかったのがトウモロコシやサツマイモ。こたえられないぐらい、甘かった」と驚きを示した。
記事は最後の部分で読者に向け、「食べ終わっても、急いで立ち去ってはいけません」との注意書きを添えた。使い終わった食器はすべて自分で洗う規則だからだ。筆者は夫を「食器洗いの責任者」に“任命”した。
しばらくして、流し場から夫の声が聞こえてきた。「あ~、あ~、あ~。家でいつも食器洗いをさせられる。日本に来ても、洗わなきゃいけないのか!?」との“泣き言”だったという。
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◆解説◆
台湾、さらに中国大陸や香港でも、日本旅行情報が雑誌やインターネットで紹介されることが増えた。特にネットの場合には、一般人の旅行体験記が次々に発表されている。観光スポット、飲食店、商店などで「よかった!」との書き込みがあると、読んだ人が自分でも訪れ「たしかによかった!」と発表することも珍しくない。
そのため、日本ではそれほど有名ではない場所に、多くの旅行者が訪れる現象もあるようだ。
なお、台湾では日本統治の関係もあり、「日本の味」に親しみがある。味付けは多少淡泊になったが、いなり寿司や味噌汁を出したり売ったりする店もある。かつお節を使う台湾料理もある。例えば、「麺線」と呼ばれる麺料理では、具としては牡蠣(かき)や豚の大腸の煮込みを使う。豚の大腸は伝統的日本料理の食材としては考えにくいが、全体が濃厚なかつお風味なので、麺線は日本人にとって「初めてなのに懐かしい」味と言える。
日本ではこのところ、「グルメの島」としての台湾に注目が高まっている。台湾ではラーメンや牛丼を含め、さまざまな日本料理が人気だ。日台双方に共通する食材が多いことも、「味の相互理解」の一助になっていると考えられる。