「企業は常に経営環境の変化への対応を求められている」。大阪・梅田の駅前地下道の老舗串カツ店「松葉」に自主退去を決意させた背景には、企業の“宿命”に鑑み、退去に際して「重大な損害」があるとは認められないとした大阪地裁、高裁の厳しい司法判断があった。
大阪市は今月8日、道路法に基づき店舗設備の撤去を命じる「除却命令書」を交付。11日には、行政代執行法に基づき、12日中の退去を求める「戒告書」を出した。
松葉側はまず除却命令の執行停止を申し立てたが、大阪地裁は12日に申し立てを却下。さらに、戒告の執行停止の申し立てについても、15日付で却下する決定を出した。
地裁は決定理由で、松葉が昨年11月30日現在、現金や預金などの流動資産が7200万円以上ある一方、買掛金や未払金などの流動負債が約2700万円にとどまり、3500万円を超える利益剰余金を有していると指摘。店を強制撤去されても会社の存続は危ぶまれず、別の店で営業を続けることは可能だとし、「行政目的の達成を一時的に犠牲にしてまでも救済しなければならない損害とはいえない」とした。
これに対し、松葉側は12日付決定を不服として即時抗告したが、大阪高裁も抗告を棄却。高裁は決定理由で、「企業は常に経営環境の変化への対応を求められている」と強調。除却は昭和55年から予定されていたことで、松葉側には経営を変化させる猶予期間があったとし、市が進める地下道の拡幅工事についても「公共性が高い」と判断した。