「日本を含む先進国がかつて電子ゴミなど産廃を中国に輸出して処分していた時期があるでしょ。キョンシー肉も同じ構造です。各国で廃棄対象となりながら、コストの問題で放置されていた冷凍廃棄肉を中国の業者がタダ同然で引き取っているのです。さらに欧州などの一部の国では、災害や戦時を想定して食肉を備蓄しており、それらが裏ルートで業者にわたったとの情報もあります」
一方、広州市郊外で飲食店を経営する松田尚さん(仮名・42歳)によると、キョンシー肉は中国国内でも生産されているようだ。
「中国では牛肉や豚肉の価格が不安定で、価格が安いときに仕入れ、冷凍して値上がりするのを待つ精肉業者もいる。なので、食肉市場の相場が急に上がった時は、粗悪な肉が出回ることが多い。3~5年間、冷凍庫に眠っていたような肉もザラ。最近では、明らかに冷凍焼けした古い肉を持って来て、『ドライエイジです』とのたまう業者もいる。中華料理では、肉に濃いめの味付けをすることが多いので、わかりにくいのです」
さらに肉をめぐってはこんな騒動も。山東省済寧市で主婦が購入した牛肉の切り身が動き出し、「キョンシーも真っ青」と話題に。『斉魯網』(6月26日付)が報じた映像を見ると、肉塊の表面が、生きているかのようにピクピクと動いている。地元衛生当局の担当者は、「末梢神経が生きていることで起きるもので、新鮮な証拠」としているが、購入から丸一日経過しても動き続けており、主婦は「寄生虫しか考えられない」と発言。ネット上でも「どう考えても寄生虫」との意見が多勢を占めている。映像を見て、「悪夢が甦った」と語るのは、広東省仏山市で貿易業を営む林田岳男さん(仮名・50歳)だ。
「市場で買ってきた牛肉を包丁で切ったら、血管の断面から白い寄生虫がウジャウジャ出てきたことがあった。それ以来、私は牛肉が食べられなくなりました」
水を注入して嵩増しした「注水肉」や「病死肉」の流通など、中国では食肉をめぐる事件が相次ぐ。その背景について、中国人ジャーナリストの周来友氏はこう話す。
「背景には食肉格差がある。都市部では飽食なのに、農村部ではいまだに年に数回しか肉を食べられない地域も少なくない。多少古くて危険でも、『安ければ買う』という人々は内陸部にまだまだいる。彼らがいなくならない限り、こうした偽装肉はなくならない」