(写真はエディさんと手話でコミュニケーションするジータさん、2015年8月3日)
ジータさんは耳が聞こえず、言葉も話せない。子どもの頃、インドとパキスタンの国境近くで迷子になり、2001年にパキスタン側で保護された。当時、身元のわかるものを何も身に付けていなかった。
ジータさんはその後、パキスタンで有名な人道支援家、アブドゥル・サッタール・エディ氏の率いるエディ・ファウンデーションに入れられ、そこで育てられた。
それから約15年の月日が流れた。そして今、23歳前後になるジータさんがインドで暮らす家族と再会できる希望が見えてきた。
ジータさんの話が、最近大ヒットしたボリウッド映画のストーリーにあまりによく似ているとして、インドとパキスタン両国のメディアで話題になっている。7月に公開された映画『バジュランギ・バイジャン』は、人気俳優サルマン・カーンさん演じるインドの男性が、言葉の不自由なパキスタンの少女に出会い、少女をパキスタンにいる家族と再会させようとするストーリーだ。
駐パキスタンのインド高等弁務官は先週、ジータさんを訪問。インドのスワラジ外相は会合後、「高等弁務官はジータさんがインド人だと考えている」と述べ、ジータさんをインドに帰らせてあげたいとの考えを示した。
ジータさんは保護された直後、孤児院に入ったが、その後、エディさんの妻に育てられた。
エディ・ファウンデーション所長でエディさんの息子、ファイサル・エディさんによると、「ジータさんは最初、私の母親に会った時、インドの伝統的なやり方で両手を合わせ、母の足を触れた。(ヒンズー教の)寺院に連れて行くとそこで祈りをささげた」。こうした行動から、ジータさんがインドから来たと考えたという。
ジータさんは現在、エディ・ファウンデーションがカラチに持つ施設で、子どもたちの世話をして暮らしている。子どもたちとの意思疎通には手話と筆談を使っている。
エディさんは、メディアで話題になったことで、ジータさんがインドにいる家族と再会できると期待している。実際に、中部パンジャブ州に住む一家が自分の娘かもしれないと連絡を取ってきたという。
ジータさんも最近、この映画を見た。エディさんによると、映画がハッピーエンドだったため、ジータさんは「自分の母親がどこにいるの」、「家に帰りたい」などと何度も口にしているという。