ニュージーランド北島の市営ハミルトン動物園で飼育係がスマトラトラに襲われて死亡した問題で、市当局は21日、このトラを殺処分にはしない方針を決めたと発表した。
同動物園の飼育係だったサマンサ・クデウェさん(43)は20日、11歳のオスのスマトラトラ「オズ」に襲われて死亡した。クデウェさんは動物の保護や繁殖に詳しいベテランとして周囲の信頼も厚く、同動物園には10年前から勤務していた。
動物園は24日まで閉園となり、警察などが捜査に当たっているが、市当局は21日、「オズのような大型猫類を扱う動物園の専門員には常に危険がつきまとう。しかしそれ以上の危険が広がっているわけではない」との見解を示し、「オズを殺処分とすべき理由はない」と判断したことを明らかにした。
関係者は、「オズがクデウェさんを襲ったのは本能的な行動だった」との見方を強めているという。
オズは2013年にハミルトン動物園に来てメスの「サリ」とつがいになり、2頭の子どもが生まれた。自然保護団体のWWFによると、スマトラトラは深刻な絶滅の危機に瀕しており、残る個体数は400頭に満たない。
市当局は、「オズはこの種にとって非常に大切な存在。2頭の子どもがいて、この希少種の保存のための繁殖プログラムには欠かせない」と指摘している。