横浜市のマンション傾斜問題で旭化成建材と親会社の旭化成が20日、都内で会見。旭化成の浅野敏雄社長は報道陣からの質問に、「調査中で答えられない」を連発。調査の不十分さばかりが目立った。
会見を見る限り、損害賠償などを巡って、これから旭化成と三井不動産との間でバトルが起きそうな雲行きだ。
浅野社長は4棟のマンションの建て替え費用について、「売り主、施工会社と誠意を持って協議したい」と語り、平居正仁副社長も「住民の皆さんへの調査にかかる費用は、(三井不動産レジデンシャルなどとの)分担を最後に決める」と話した。
「『子供の学区の変更を余儀なくされるので、引っ越しはとてもできない』と心配する住民もいる。生活基盤のケアはどう対処するのか」との質問に、平居副社長はこう答えていた。
「三井不動産レジデンシャルが主体的に行っている。私たちが口を出すことではない」
売り主の三井不動産の名前を挙げて、少しでも負担を減らしたい意図がミエミエだった。それもそのはず、4棟の建て替えには300億円以上かかるとされる。住民への損害賠償や仮住まいの家賃まで負担していたら、いくらかかるか分からない。その上、この10年間で手掛けた3000棟のチェックも行わなければならない。新たに不正なマンションが出てくる恐れもある。
昨年、住友不動産と熊谷組の間でも同様のケースがあり、建て替え費用に関してまだ決着がついていない。巨額の費用をかけた旭化成vs三井不動産の泥仕合は、果たしてどう転ぶのか。
日大名誉教授の板倉宏氏はこう言う。
「どちらがどの程度の費用負担になるかは、はっきりと分かりません。今後、三井不動産が旭化成を民事で訴える可能性もある。その時に負けるのは旭化成でしょう。また、建築基準法違反に問われ、刑事訴訟に発展する恐れもあります」
旭化成は少しでも負担を減らしたいだろうが、簡単にはいきそうもない。