米当局者は4日、エジプトで墜落したロシアの旅客機について、過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」か系列組織によって爆弾を仕掛けられたとの見方を強めていることを明らかにした。
英国のハモンド外相も、同機が爆発物によって墜落したことをうかがわせる「重大な可能性」が浮上したと指摘。中東の関係者も、同機に爆弾が仕掛けられていた可能性が高いと思われると語った。
ロシアのコガリムアビア航空9268便は10月31日、エジプトのシャルムエルシェイクからロシアのサンクトペテルブルクに向かう途中で空中分解してシナイ半島に墜落し、搭乗していた224人全員が死亡した。
直後にISISが犯行声明を出していたが、当局はこれまでテロの可能性を否定していた。
しかしある米当局者は、これまでに収集した情報を分析した結果、ISISか系列組織が同機に仕掛けた爆弾が爆発した可能性が最も高いことが分かったといい、「同機の荷物などに爆発物が仕掛けられたとの確信がある」と説明。墜落前に収集された情報と以後の情報をさかのぼって分析した結果、「シナイ半島で注目すべき動きがあったことが分かった」とした。ただしまだ米情報機関が正式な結論を出すには至っていないと強調している。
シャルムエルシェイクの空港で何者かが同機に爆弾を仕掛ける手助けをしたとの説も浮上した。別の米当局者は、「この空港は警備が手薄なことで有名だ」「誰かが空港で手助けしたことをうかがわせる情報がある」と話した。
ISISの関与については、犯行声明とは別に、組織内で交わされたやり取りを監視した結果などから、同組織絡みの犯行と判断したという。
これに先立ち英首相官邸は、「まだ捜査は続いており、ロシア機の墜落原因について断定はできない」としながらも、「より多くの情報が明るみに出る中で、同機は爆発物によって墜落した可能性があるとの懸念が強まった」と発表していた。
シャルムエルシェイクから英国へ向かう予定だった便は出発を見合わせ、英国の航空専門家が同地の空港で安全対策を検討しているという。
アイルランドの航空当局も同日、シャルムエルシェイクの離発着便は当面の間、全便の運航を停止すると発表した。
同日夕刻にシャルムエルシェイク出発便に乗る予定だったという英国人観光客は、空港ターミナルに到着した英大使館職員の誘導でバスに乗り、市内のホテルに泊まることになった。空港には緊迫した空気が漂い、乗客らが係員に怒鳴り散らしたりしているという。
シャルムエルシェイクはビーチリゾートとして海外からの観光客らでにぎわう観光地。ロシア機が墜落したのは同地から北へ約300キロの地点だった。シナイ半島ではここ数年、ISIS系の武装勢力とエジプト治安部隊の衝突が続き、何百人もの死者が出ている。
エジプト内務省は3日の時点で、「(同機の墜落が)テロだったことを示す根拠はない」との判断から、シャルムエルシェイクの空港や市内の警備の強化は行っていないと説明していた。
一方、在エジプト米大使館は職員に対し、墜落原因が明らかになるまでシナイ半島へは行かないよう指示した。