(営業当時の「クンパルシータ」)
かつて木屋町にあったタンゴ喫茶「クンパルシータ」の旧蔵レコードを聴く催しがこのほど、京都市中京区の元立誠小であった。立ち見ができる盛況ぶりで、常連客やタンゴファンが哀愁の響きとともによみがえる懐かしい思い出に浸った。
ラテン音楽に詳しい野村英男さん(85)=北区=が進行を務めた。本場アルゼンチンのブエノスアイレスの街並みをタンゴの名曲とともに紹介する映像をスクリーンに映し、解説。続いて、クンパルシータのレコードから選んだ10曲をかけた。曲ごとに歌の生まれた背景や演奏者について説明した。
最後の曲は店の名前になった「ラ・クンパルシータ」。題名は仮装行列を意味するという。日本でも有名な作曲家でバンドネオン奏者のアストル・ピアソラとともにタンゴの三大ヒーローに数えられるアニバル・トロイロの楽団による演奏で、野村さんは「常に世界のどこかで流れていると言われるほど有名な曲です」と説明した。
タンゴ喫茶「クンパルシータ」は戦後すぐの1946年に開店した。タンゴ好きなママが基本的に1人で切り盛りしていたが2007年に店を閉じた。ママが亡くなった後、店でかけていたレコードは、店があった場所に近い木屋町通沿いの元立誠小で保管されており、地元住民たちが聴く場を企画した。
職員室を使った喫茶店に高齢者を中心に約90人が来場。ぬくもりのある木の空間に響く哀調に身を浸していた。常連客だった京都中南米音楽研究会の川嶋信子さん(74)=右京区=は「20歳ぐらいから閉店するまで通った。店内は照明が暗く、ママも静かで落ち着く空間で、店にあったレコードを聴いて久しぶりにあのころを思い出した」と話した。