(均一運賃区間の拡大で、区間内に含まれた嵯峨・嵐山地域)
京都市交通局が市バスの均一運賃区間の拡大に乗り出している。昨年に嵯峨・嵐山地域(右京区)へ広がり、来年春から岩倉・修学院地域(左京区)への拡大も決定した。競合する民間バスの合意が必要だったが、市バスとの連携強化で増収を目指す京都バスの理解を得て、46年ぶりの区間変更が実現した。ただ、運賃値下げを伴うため他の民間バスには慎重な声も強く、今後も拡大が続くかは未知数だ。
均一区間の拡大は従来から、区間外の地域から要望が寄せられていた。拡大は民間バス会社の同意がないと国土交通省の認可が受けられず、市交通局は何度も民間と協議したが、運賃値下げになる路線が多く、実現しなかった。1968年の導入以来、半世紀近く範囲は変わらなかった。
しかしここ数年、外国人観光客が増加し、観光客に人気の1日乗車券(500円)が区間外では使えず、「フリーチケットなのに追加運賃がいるのか」といった苦情が運転手に殺到。「身ぶり手ぶりの英会話では説明できない」(市交通局)状況になっていた。
同局はまず観光地の嵯峨・嵐山への拡大を目指し、2012年度に京都バスへ打診した。
京都バスは地下鉄開通の影響などでここ25年間で2割以上乗客が減少。均一区間の拡大で値下げになる路線も多いが、観光客の乗客が急増する市バスと連携した方が、将来的に増収につながると判断した。1日乗車券を京都バスでも使えることで合意し、昨年3月に拡大した。
昨年度の京都バス全体の乗客数は4%増加し、京都バスの担当者は「1日乗車券が使えないというトラブルがなくなった。市バスとは競合ではなく共存の道を探る」。12月には、住民の利便性向上という観点も踏まえ来年3月から岩倉・修学院地域にも拡大することで合意した。
交通局は残る洛西(西京区)、横大路(伏見区)、高雄(右京区)、上賀茂・西賀茂(北区)の区間外地域にも拡大を目指す。だが、西日本ジェイアールバスの京都駅-高雄間の運賃は現行520円で、均一区間になれば半額以下になり、同社の担当者は「簡単に『はい』とは言えない」。洛西を走るヤサカバスも「通勤通学客が中心で、1日乗車券が使えても乗客は増えるのか疑問だ」と慎重な姿勢を見せる。
市交通局は「市バス・地下鉄との連携強化で、お互いの乗客を増やしたい」とするが、多額の税金が投入されている同局が一方的に求めると民間の反発を招く恐れもある。民間にもメリットのある連携策を提案できるかが、均一区間拡大の鍵となりそうだ。