妊産婦死亡率が世界最低水準のイタリアで、昨年12月25~31日の7日間に5人の妊婦が出産時に死亡したことを受け、衝撃が広がっている。同国の保健当局は3日、調査を命じた。
いずれの死亡例も原因は個別に説明できるとみられるものの、年末の時期に集中して起きたことから、病院の職員確保や高齢妊婦のチェック体制を疑問視する声も上がっている。
直近の死亡例は、3人目の子どもの妊娠8か月だった女性(29)。パートナーの男性の話では、高熱と胃腸炎の症状を訴えて30日に北部ブレシア(Brescia)の救急センターに運ばれ、翌日の大みそかに死亡した。医師は緊急帝王切開を試みたものの、母子ともに死亡した。
ベアトリーチェ・ロレンツィン(Beatrice Lorenzin)保健相は、この女性に加え、他の死亡例4件のうち3件について原因を究明するため専門家を派遣。最初の報告は4日に予定されている。
報道によると、他の死亡例のうち2件は、35歳と39歳の妊婦が出産中に心不全を起こし、死産となった。また、クリスマスの25日には、緊急帝王切開を受けた妊娠8か月の女性(34)が死亡。女性は自宅で転落事故に遭ったと伝えられている。お腹の中にいた男児は、摘出から数時間後に死亡した。
調査対象とならなかったのは、南部フォッジャ(Foggia)で死亡した女性(23)で、出産予定日を目前に自宅で急死した。お腹の中にいた女児は母親の死後行われた帝王切開によって無事誕生した。
著名な婦人科医であるローマ(Rome)のラ・サピエンツァ大学(La Sapienza University)のロザルバ・パエザーノ(Rosalba Paesano)教授(婦人科学)は、今回の事例の数件について、妊娠後期に生じる血栓症や心臓疾患のリスクに対する検査が不十分だったために起きた可能性があるとの見方を示した。
ローマのサン・カミロ(San Camillo)病院のアントニオ・スタリタ(Antonio Starita)医長はイタリア紙スタンパ(La Stampa)に、「イタリアで際立っているのは妊婦の35%が35歳を超えていることだ。この年齢では妊産婦の死亡リスクが倍増する」と語った。
スタリタ氏によると、一部の保健機関で新規雇用が止まっているため、スタッフ、特に家庭を訪問して妊娠をめぐる問題の初期兆候に気付くことができる助産婦が不足している恐れがある。