
英ロックバンド「ザ・ローリング・ストーンズ」は25日、キューバ・ハバナで同バンドにとって同国初のコンサートを入場料無料で開催し、詰め掛けたファンを熱狂させた。
バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領による歴史的なキューバ訪問から数日後となる同地での公演について、ストーンズは「歴史的なイベントになる」と語っていた。
かつてロックミュージックが禁じられていた共産国キューバ史上最も豪華なコンサートとなった。キューバの国営メディアによれば、推定動員数は50万人だという。
首都ハバナ(Havana)のスポーツ複合施設シウダード・デポルティーバには、英国のスーパースターの演奏を聴こうと大勢のファンが詰め掛けた。多数の警察官も出動し、飲酒は禁じられた。
現地時間午後8時35分(日本時間26日午前9時35分)、バンドのフロントマン、ミック・ジャガーがワインレッドのシャツにカラフルなスパンコールをちりばめたジャケット姿でステージに現れ、「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」「イッツ・オンリー・ロックン・ロール」などの往年の名曲を披露すると、年配のカップルや家族連れ、観光客、そして大勢の若者は熱狂した。
会場付近の通りに市民があふれ、建物の屋上にも大勢の人々が集まり、会場から1キロほど離れた場所でもはっきりと聞こえる音楽に耳を傾けた。
多くの人々が場所取りを開始したのはコンサートが始まる6時間以上前だ。一番いい場所を確保しようと野宿した人々もいる。
ストーンズ・ファンのスニアン・モレーラ(Swnien Morera)さん(27)は「一番乗りはできなかった、この場所からだと何一つ見逃すことはないと思う」と語った。
■キューバの変化に期待
今回のストーンズ公演は、イデオロギーと経済の面で数十年間、国際社会から孤立していたキューバがようやくその状態から抜け出す表れだと多くのキューバ国民は口をそろえて言う。
キューバ南部シエンフエゴスからバスで訪れ、コンサートが始まる前に会場で眠ったというミゲル・ガルシア(Miguel Garcia)さん(62)は「泣きそうだよ」と語った。
「このコンサートは私たちを閉じ込めていた扉の鍵になるよ。キューバでいろいろなロックバンド、特に私たちが参加できなかった時代のロックバンドをもっと聴けるよう、ストーンズがその扉を開いてくれるんだ」
ハバナでロックの生演奏が聴ける数少ないクラブの一つ「イエロー・サブマリン」を開いたエディー・エスコバルさん(45)は「ハバナでローリング・ストーンズのコンサートなんて夢のようだ」と言う。昔は、ストーンズやレッド・ツェッペリン、ディープ・パープル(Deep Purple)などの曲を聴ける米国の民間ラジオの周波数を人目に付かないように探したという。
「ロックミュージックが政治や経済、インターネットなどあらゆることの扉を開いてくれることを願っている。私たちは全てにおいて20年は遅れているから」