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最新鋭軍事ヘリ「アパッチ」無断見学“事件”で台湾メディア過剰ゴシップ報道 

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台湾の陸軍で、米国製最新鋭攻撃ヘリAH64Eアパッチの無許可見学が発覚、メディアが連日報道し一時は国防部長(国防相に相当)が辞意を漏らす騒動となった。だが、“賞味期限”が過ぎると報道はほぼゼロになり、懸念された機密漏洩(ろうえい)がなかったことも小さく報じられただけ。一連の騒動は、テーマによっては過剰にゴシップ紙化する台湾メディアの風潮を浮き彫りにした。

 「男のコはみんな大はしゃぎ。ホント、格好良過ぎ」

 台湾で「さほど有名ではない」女性芸能人、李●(=くさかんむりに債の貝が円)蓉氏(36)のフェイスブックにこんな書き込みがあったのは3月29日。格納庫内のアパッチの前でポーズを撮ったり、操縦席に乗り込んで笑顔を見せたりする写真5枚がアップされた。

 AH64Eは、台湾の陸軍が中国からの侵攻に備えて2013年末から全30機の予定で導入しているアパッチの最新型。米国以外で保有するのは現在、台湾に限られる。そのアパッチのパイロットで指導教官の中佐(40)が、李氏の家族や知人ら十数人を無許可で基地に招き入れていた。


専門家によれば、「第一線の装備品を許可なく知人に見学させるなどあり得ない」(専門家)。国防部が懲戒処分を決め、検察も動き出した翌日の4月3日付朝刊は、主要4紙のうち3紙が1面トップで取り上げた。同日にはパイロットら5人の処分も発表され、ここまではメディアも規律の緩みや機密漏洩の疑いを指摘する通常の報道姿勢だった。


虎の尾を踏んだ?

 だが、報道はこの後、急速にゴシップ紙化する。3日付の蘋果日報によると、李氏は報道陣から「謝罪」を求められ、「そんな重大なことなのか」などと反論したという。これが火を付けたのかもしれない。テレビを中心に、金持ちが不当に権勢を振るさまを表す「権貴」という言葉を用い、李氏ら家族の豪華な生活やパイロットの生活態度を批判しはじめた。

 「権貴」は昨年11月末の台北市長選でも何度もメディアに登場した言葉だ。一度そのレッテルを貼られると、私生活を暴くことが公共の利益であるかのような報道が相次ぐ。

 李氏については、事情聴取に呼ばれた際の服装や価格が詳細に報じられ、家族で食事をした際の値段まで記事になった。さらに、見学時の一行に外国人家政婦がいたことが判明すると、どういう根拠なのか「不法就労の疑い」と報道。台北市の担当部局が対応に追われた。

日本人も“被害者”に

 「見学」にまつわる報道では、パイロットの上官の家族が無許可で見学していたことを突き止めたのは良かったが、許可を得た団体についての誤報もあった。

 また、一行に日本人男性(25)が含まれていたことが分かると、氏名や勤務先、顔写真を公表。この男性は、大手証券会社系研究所の台北事務所に務めており、「日本の情報要員」に仕立て上げられた。だが、日本の陸上自衛隊が一つ前の型のアパッチAH64Dを保有していることを紹介する報道は見かけなかった。

 9日にはパイロットの高齢の父親と姉が記者会見での謝罪に追い込まれた。父親はなぜかパイロットの退職金を公益のために寄付することを約束させられた。姉は「私たちのどこが権貴なのか。報道は公正にしてほしい」と求めたが、翌日の見出しは「姉が火に油」(蘋果日報)だった。


問題の本質は…

 写真公開による情報漏洩の有無について、米国の対台湾窓口機関、在台米国協会(AIT)のジマー報道官は9日、公開された写真で「米陸軍が公開してこなかったものはない」と漏洩の可能性を否定した。だが、本来、大きく報道されていいはずのこのニュースは、極めて小さな扱いしか受けなかった。

 国防部の羅紹和報道官は14日の記者会見で、ネット上の一部の論調について「根も葉もない噂もあり、当事者や軍の名誉を傷つけている。言論の自由を乱用しないでほしい」と呼びかけたが、発言はネットユーザーだけに向けられたものではないだろう。






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