和歌山県太地(たいじ)町の伝統的な追い込み漁で捕獲されたイルカを入手している日本動物園水族館協会(JAZA、東京)が、世界動物園水族館協会(WAZA、スイス)から除名を通告された問題で、日本協会は二十日、会員による投票の結果、世界協会への残留を決めたと発表した。
残留決定で、日本協会は今後、会員施設が太地町で捕獲されたイルカを入手することを禁じる。荒井一利会長は二十日に環境省で記者会見し、「飼育下での繁殖を推進する。日本協会は追い込み漁は残酷ではないと一貫して主張しており、今回の決定は追い込み漁や捕鯨を非難するものではない」と話した。
投票は日本協会に加盟する八十九の動物園と、六十三の水族館で行われ、このうちイルカを飼育しているのは三十四の水族館。有効票は百四十二票で、「残留」が九十九票、「離脱」が四十三票だった。
会員施設はこれまで、太地町から年間で計二十~三十頭のイルカを入手してきた。世界的には繁殖による個体確保が主流で、今後は偶然網にかかって保護された場合などを除いて、繁殖以外での入手は不可能になる。
荒井会長は今後について「繁殖率の高いアメリカの事例も参考に、会員同士でノウハウを共有し、動物を交換するなど、繁殖を促進する取り組みを協力して行う」とした。
<世界動物園水族館協会(WAZA)> 50以上の国や地域から約300の動物園や水族館が加盟する民間団体で、スイスに本部がある。動物の飼育環境の向上などを目的に設立され、希少動物の種の保存にも取り組んでいる。国内からは日本動物園水族館協会のほか、上野動物園(東京)、大阪市天王寺動物園など単独で加盟している施設もある。加盟していると、世界各国の動物園や水族館とのネットワークを構築、希少動物に関する情報が得られやすくなるなどのメリットがある。