韓国のネットメディア『デイリージャーナル』が〈もし機会があれば、日本皇室の佳子姫を慰安婦にするしかない〉と佳子内親王を侮辱する信じがたい記事を掲載した。筆者のチョン・ジェハク氏とはいかなる人物なのか。
「保守派の論客ですが、一般韓国人のほとんどは彼の名前を知らないでしょう。ただし一部には彼を“文豪”と呼ぶ保守系のメディアもあります」(ソウル在住ジャーナリスト)
その存在感はむしろ日本での方が強いかもしれない。2012年8月に当時の李明博大統領が竹島に上陸して日本から批判を浴びた際には、「竹島を日本の領土と主張するのは覇権主義を継続しているからで、日本は猿のように卑怯な国家である。東日本大震災に続き富士山を中心にもう一度天罰が下る」とやはりトンデモ言説を繰り出して物議を醸した“前科”がある。
彼を編集委員として登用する『デイリージャーナル』はソウルではなく地方都市の光陽市に拠点を構えている。本誌は同社を通じ、チョン氏に取材を試みたが、記事の威勢のよさとは裏腹に対面や電話での取材を頑なに拒否。担当者を通じてメールでなら回答に応じると連絡してきた。以下、そのやりとりから抜粋する。
──なぜこのような記事を書いたのか。
「戦争の犯罪国として反省しない日本の態度は世界中の怒りを買っている。平和を口にする彼らの二重性と偽善には吐き気がするほどだ。特に従軍慰安婦のおばあさんたちを馬鹿にする言行は日本の卑怯と野蛮を象徴している。日本の野蛮と人類の正義を知らしめるためにこの記事を書いた」
──佳子内親王の名前を使ったのはなぜか。
「従軍慰安婦のおばあさんたちが強制的に連行された時の年齢が、佳子姫と同じくらいの年齢だった。16歳の少女が1日で日本軍50人を相手にしたことを、彼女は真剣に考えなければならない」
──(記事内の)「日本列島を沈没させるマグニチュード10の地震が必要だ」という記述は震災被災者を傷つけるものだ。
「そのような事態を想定し、日本が世界各地に土地を用意しているのを知っている。日本沈没に備え、日本人だけが住めるような場所を南太平洋に用意したのは日本人なのだから、日本沈没は日本人自身が認めていることだ」
念のため書いておくが、チョン氏はSF小説家ではなく論説家であり、ジャーナリストである。だが、他の質問に対しても支離滅裂な答えが続いた。彼の主張が妄想以外の根拠を持たないことは明白である。また回答の中で佳子内親王と眞子内親王、愛子内親王が三姉妹であると勘違いするなど、日本の皇室への理解が実に乏しいことがうかがえる。
日本に関する取材歴を問うと、何とチョン氏は日本を訪れたことは一度もなく、日本文化については韓国でベストセラーになった山岡荘八の小説『大望(徳川家康)』を読んだことがあるくらいだと言い放った。
その程度の知識で皇室はもとより、慰安婦問題や捕鯨など日本について論じようとしているのだから笑止千万だ。
※週刊ポスト2015年6月5日号