韓国が中東呼吸器症候群(MERS)の“スーパー伝播”地域として認識されたことで、外国人観光客の韓国旅行のキャンセルが大幅に増えるなど、波紋が広がっている。世界医学界の専門家たちも韓国の遅れた対応の問題を指摘しながら、一般的に伝染性が高くないと知られているMERSが、どうして韓国でここまで急速に拡散したのか関心を示している。
国際的にも韓国政府の遅れた対応がMERSのスーパー伝播の原因になったという批判が相次いでいる。世界保健機関(WHO)にMERS関連の助言を行っているペーター・ヴァン・エンバーレーク氏は2日『サイエンス』とのインタビューで、韓国におけるMERSの急速な伝播は「病院で感染制御が遅れたためだ」と指摘した。ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のアラムディン・ジュムラ医学部教授は3日、世界的な医学専門誌『ランセット』への寄稿文で「韓国保健当局の不適切な隔離措置と穴のあいた公衆衛生監視システム」が、香港と中国への感染の可能性を高めたと指摘した。
専門家たちは、MERSウイルスが変異したか、韓国人がこのウイルスに特に弱い可能性があるとも分析した。ヴァン・エンバーレーク氏は「(韓国人初の感染者が)他の系列のウイルスを保有しているか、韓国人が他の国の国民よりもMERSに影響を受けやすいかもしれない」と述べた。重症急性呼吸器症候群(SARS)の原因を明らかにするのに重要な役割を果たしていたウイルスの専門家マリク・フェイリス香港大学教授は「ウイルスが何らかの変異を経たのではないかという疑問を提起している」とし「ウイルスの完全な遺伝子塩基配列情報を取得するのが切実だ」と述べた。フェイリス教授は、「韓国政府に協力するという意向を伝えたが、まだ具体的な回答を聞いていない」と話した。
韓国内のMERS拡散に対する国際的懸念が大きくなるにつれ、外国人観光客が韓国旅行をキャンセルする事態も広がっている。韓国観光公社は、2日現在、韓国訪問をキャンセルした外国人観光客が約7000人に達すると発表した。前日約2500人から3倍近くに増えたものである。旅行をキャンセルした観光客を国別にみると、中国・台湾・香港など中華圏の観光客が6900人で、アジア圏が100人だと観光公社は説明した。ただし、アメリカとヨーロッパ地域からのキャンセルはあまり見当たらない。
観光公社の関係者は、「世界的に国内のMERS患者拡散の様子が報道されているため、キャンセル事態が続くと思われる」とし「特にSARSを経験し、大きな被害を受けた中国人が韓国を避ける可能性が高い」と伝えた。韓国旅行キャンセルが増えたことで、観光シーズンの7~8月に観光客を呼び込むことが難しくなる見込みだ。
台湾外交部は、韓国のソウルと京畿道地域の旅行警報を黄色に高めたと台湾『中央通信社』などが4日報じた。台湾外交部は3日、ソウル地域でMERSが広がっていることを受け、ソウル・京畿地域は「黄色」に旅行警報を格上げし、その他の地域は「灰色」警報を維持すると明らかにした。台湾旅行警報は深刻性の程度に応じて、赤・オレンジ・黄?灰色の四段階に分けられる。香港の主要大学医学部は3日、当局の指示に従って韓国の医療機関との交流を一時的に中断することにした。
日本政府も韓国のMERS事態に神経を尖らせている。菅義偉官房長官は4日の定例記者会見で、「政府は、当然(現在韓国などのMERS事態を)注視している。厚生省が各医療機関や検疫機関を通じて感染が疑われる患者を発見した場合、対応措置をとるように各自治体と検疫に既に指示した。追加の対策も検討している」と明らかにした。