中東呼吸器症候群(MERS)による深刻なダメージはしばらく続きそうだ。今夏に韓国を訪れる外国人観光客が80%以上減少し、観光業界の損失は1000億ウォン(約112億円)以上になるとの推算が出た。一方、韓国での感染者数は微増が続き、24日現在で179人に。1000人を超えるサウジアラビアに次いで世界2位となっており、旅行客を離れさせる“要因”となっている。
韓国旅行業協会は22日、7、8月の旅行シーズンに韓国行きを予約した外国人は20万2541人で、昨年同期に比べ82%減ったと明らかにした。中央日報が伝えた。
中国人が83・7%、日本人が84・4%減少すると予測。東南アジアから69・8%減、米国・欧州地域からは70%減となると予想され、観光収入も昨年より82・1%減って1085億ウォンの損失が出ると推算されている。
一方、韓国のMERS感染者数は24日現在で179人で死者は27人。今月初旬の増加率と比べると落ち着いているが、不名誉なのは、“発生源”の中東地域の多くの国よりも感染者数が多いことだ。
欧州疾病予防管理センター(ECDC)のデータによると、2012年4月から今月18日までのMERS感染者数は、全世界で1354人。
国別でみると、18日現在でサウジアラビアが1035人と最も多く、韓国は164人で2番目。アラブ首長国連邦(78人)、ヨルダン(19人)、カタール(13人)、イラン、オマーン(各6人)、英国(4人)、クウェート、ドイツ、チュニジア(各3人)と続き、中東諸国以外では韓国の多さが際立つ。
元厚労省の医系技官で、医療法人財団綜友会医学研究所の木村盛世(もりよ)所長は、「症状が現れない不顕性感染のケースもあり、中東の感染者数は実態をどこまで反映しているのか分からない」と指摘するが、院内感染で拡大したのは韓国だけ。患者が病院を複数受診する慣習や見舞客が多い文化、医療機関の換気態勢の不備などが理由に挙げられ、韓国メディアも、「『薄情と言われたくない』韓国文化があだに」(21日付電子版、朝鮮日報)と自戒を込めて報じている。
元小樽市保健所長で医療ジャーナリストの外岡立人氏は「多くの人と接触し感染を広めた患者『スーパースプレッダー』(伝播者)の存在を早期に見抜けなかったことが大きい。ただ、医者や看護師まで感染したことは特異だ。韓国の見舞い文化などだけでは説明がつかない側面もあり、病院の態勢に想像を絶するような問題があるのだろう」と話す。
MERSの後遺症は根深い。