和歌山電鉄貴志川線のウルトラ駅長を務めた三毛猫「たま」(16歳)の社葬が行われた28日、たまが長年勤務し、告別式の会場となった貴志駅(紀の川市)には約3000人のファンが詰めかけた。駅舎脇に設けられた献花台は、花束を始めとする多くのお供え物でいっぱいとなり、大勢に愛されたたまの人気ぶりを見せつけた。
葬儀は神式で営まれ、神職が祭詞を奏上。最初に葬儀委員長の小嶋光信・和歌山電鉄社長が弔辞を述べた。
来賓として参列した仁坂知事は「和歌山の知名度を上げて観光客を増やし、県民の心に明るさとほのぼのとした温かみを与えてくれた。あなたの面影は私たちの胸の奥にとどまり続ける」と祭壇に置かれた遺影に向かって感謝の言葉を述べた。
同駅でかつて売店を営み、たまの飼い主の住友利子さんは「たまはこれからも皆さんの心の中で生き続けると思います」と話した。
玉串をささげる場面では、たまの部下でスーパー駅長の三毛猫ニタマも同電鉄の社員に抱かれて姿を見せ、小嶋社長とともに遺影に向かって一礼した。
駅舎脇の献花台には、生前のたまの写真が何枚も飾られた。紀の川市貴志川町岸宮、小学2年中西悠太君(7)は「顔も鳴き声もかわいく、今まで何回も会いに来た。天国でゆっくりしてね、と伝えたい」と話した。
家族4人で参列した有田川町徳田、主婦東田由美子さん(62)は「地域を懸命に盛り上げるけなげな姿に心を打たれ、いつも元気をもらっていた。こんなにも多くの人たちに愛される猫がいたことを一生忘れません」と語った。
和歌山電鉄が経営に参加する前の南海電鉄時代の2005年度の貴志川線の年間利用者数は192万人だった。しかし和歌山電鉄が引き継ぎ、たまが駅長に就任して以降は200万人を超えるように。13年度は230万人にまで増えた。定期券利用者を除いた13年度の利用者数は78万人で、05年度から14万人増え、同線の経営改善に貢献した。
和歌山電鉄は、貴志駅ホームにたまの墓を作り、横にある「ねこ神社」を「たま神社」と改名する式典を8月に執り行う。