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新国立・白紙撤回の舞台ウラ 「森元首相を黙らせろ」 安倍官邸が進めた極秘計画

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新国立競技場は撃沈の寸前だった。まず、予算。当初予定の1300億円の倍近い2520億円ですら、開閉式屋根や1万5000席の可動席を取り払った数字。消費税の10%引き上げや、最大の懸案だったキールアーチの特殊鋼材の値上がり、作業の難航によって「完成時の1000億円上乗せは常識」(ゼネコン関係者)と言われた。

加えて、事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)は、“大甘”な計算によって年間収支を黒字としていたが、根拠となるのは年間80日のスポーツ関連イベントと12日のコンサートと、天然芝の養生期間を考えればありえない見通しだった。

すべて今をしのげば何とかなるという役人らしい発想で、「50年先に残る東京五輪のレガシー(遺産)」(森喜朗・東京五輪組織委員会会長)となるどころか、赤字を垂れ流す「無用の長物」となって、後世に禍根を残す恐れがあった。

政府内にもあった「見直し案」に、最後まで抵抗したのはラグビーワールド杯を新国立競技場で開きたかった森氏であり、その思いを忖度したうえで、設計者のザハ・ハディド氏ら関係者との摩擦を避けたい文科省とその傘下のJSCだった。

森氏は、新国立競技場でラグビーワールド杯を開催できないなら「五輪組織委員会会長の職も辞さない」と官邸を揺さぶり、文科省は、「ハディド案は首相の国際公約」「根底から見直せば、手続き変更と設計変更に19ヶ月かかり、さらに工期も40ヶ月以上で、時間的に不可能」と、抵抗した。

実は、安倍官邸は、森氏や文科省などの抵抗勢力を覆すために、白紙撤回のために密かに布石を打っていた。

■官邸主導の「プランB」

連日の批判で当事者能力を喪失していた文科省に替わり、首相補佐官の元国土交通省住宅局長、和泉洋人氏を中心に内閣官房チームに現行計画を白紙に戻し、ラグビーW杯を断念した場合の「プランB」を検討させていたのである。

安倍首相の「五輪までに新国立競技場が完成することを確信した」との発言は、この内閣官房チームのプランに基づいたもの。

財務省も抵抗勢力の文科省を封印するのに加勢した。総工費の高騰は財政再建路線から大きく逸脱し、今後の国会において、野党の追及などで紛糾するのは必至だった。そこで一計を案じた麻生太郎・財務相は、安倍首相に「文科省はすでに当事者能力を失っており、このままでは世論も持たない」と助言し、白紙撤回へ背中を押した。

では、白紙に戻った新国立競技場の建設計画は、今後は誰が、どのように、いくらの費用を念頭に、手続きを進めていくのか。

安倍首相は白紙に戻した17日午後、下村文科相と遠藤利明・五輪担当相を官邸に呼び、新たなプラン作りに早急に着手するよう指示した。しかし、失敗した計画を作成した役所に投げるわけにはいかない。世論も黙っていないだろう。

■国交省のエースも出動

もちろん、文科省をはじめ、事業主体のJSCも計画作りに携わることは携わるが、主導権はない。主体は内閣官房チームが行い、その傘下で指示を受けながら準備を進める。21日に再検討のための関係閣僚会議が発足。議長を遠藤五輪相が務め、杉田和博・官房副長官がトップの整備計画再検討推進室を内閣官房に新設、文科省はサポートに回る。

デザインコンペは一度実施しているのでノウハウがあるが、問題は建設の工期と総工費である。その問題に対処するため、大型公共施設を数多く手がけてきた国交省官庁営繕部のエキスパートがチームに入る。

完成までのスケジュールは、まず半年以内にデザインを決め、50カ月強で竣工にこぎつける。2016年2月ごろに着工、20年春の完成が目標だ。デザイン性や総工費などは未定だが、次のような意見が主流だ。

「さすがに二度の失敗は許されないため、派手なデザインよりもアスリートに使いやすい実用性優先で決めるだろう。予算も目標は当初の1300億円内外だ」

請負業者の選定をめぐっては、工事遅延が絶対許されないため「大半の業者が及び腰になっている」(全国紙経済部記者)と言われているが、そこはやはり、旧国立競技場を仕上げた大成建設が「自社モノ」として名乗りを上げる公算が高い。

「首相の発言があってすぐに、大成建設から電話がありました。『見直しがあっても予定通り工事を受けるつもりだから、そのまま準備はしておいて欲しい』というんです」(大成建設下請け会社の代表)

白紙撤回を受けて、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長は、状況を長引かせずに決断した日本政府の判断を尊重したうえで、「デザインは重要ではない。大切なのは20年にスタジアムが完成していること」と、述べた。

そう、日本が今後威信をかけるべきは、選手と観客にとって快適でコンパクトな競技場を、できるだけ早く完成させることなのだ。





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