ASKAをクスリ漬けにしたともウワサされる通称「新宿の薬局」なる芸能界麻薬流通ルートが警視庁に摘発されたが、早くもその後釜を狙う連中が出現しつつあるという。
暴力団の動きを探る実話誌のアウトロー系ライターのA氏は8月14日、週末の夜に歌舞伎町のキャッチなどに聞き込みをしている際、いかつい男数人に取り囲まれる事態に遭遇した。
「裏社会系の取材には慣れていますし、地元のヤクザとかなら、おおよそ誰だかわかるので、情報交換して持ちつ持たれつやってきたんですが、見たことのない連中で、一部は中国人に見えました。胸ぐらをつかまれてしまい、慌てて走って逃げたんですが……」(A氏)
実はA氏、新宿の大規模な薬物ルート摘発後の歌舞伎町で、後釜となりそうな新たな麻薬売買グループの情報を先取りしようとしていたが、まさにそのグループと思われる連中ににらまれた形だった。
「今回の摘発後、以前から顔見知りだった人にも軒並み取材を断られていて、ピリピリした感じだったんですが、ちょっと情報入手どころではないです」(同)
大規模摘発は、警視庁組織犯罪対策5課が今年7月まで暴力団幹部ら23名、顧客50名以上を逮捕したもの。1億円相当の覚せい剤などを押収しているが、この中には昨年9月に有罪判決を受けたASKAの薬物入手先とみられる暴力団「大昇会」の関係者がおり、芸能界の薬物汚染ルートのひとつともいわれている。実際、逮捕された顧客のひとりは「Choo Choo TRAIN」のヒット曲で知られる「ZOO」の元メンバー、坂井俊浩容疑者だった。
本来、この大規模摘発で麻薬売買が弱体化すると思われていたが、壊滅状態となったのは特定の組織のみ。ここでガラリと空いた「クスリ利権」をめぐって、早くも勢力争いが始まっているのだという。
「麻薬は、今すぐ欲しいという買い手がいるシロモノですから、展開が早いんでしょうね」とA氏。
警視庁は「新宿の薬局」の摘発で「壊滅状態になった」と発表したが、既存のグループの存在で歌舞伎町に進出できなかった勢力が、ここぞとばかりにシェアを取ろうとしているのだろうか?
「もともと新宿界隈は大昇会を擁する住吉会と、極東会によって占められてきましたが、厳密にはギャンブル系の縄張りである『シマ』を住吉会が持ち、うちテキヤ系の縄張りである『ニワ』を極東会が管轄する区分けみたいなものがあったんです。この結束は固く、本来は第三の勢力が入り込む余地はありません。もし外部の組織がここで商売を始めれば、武力での抗争は避けられないと思います」(同)
中国人もいたという、A氏を脅した連中が何者かはわかってないが、「最近は暴力団ではなく、一般人として入ってくる勢力がいるので厄介」だという。
「巧妙な連中は暴力団に見られないよう、ヤクザなら不可欠な神棚も設置しない事務所で、一般人の金融や土建業などを装ったりする。こういうのが入り込むと、警視庁の摘発は本当に難しいと思います」(同)
また、暴力団と情報交換をする裏社会系のライターも、新勢力の影響によって取材が難しくなると、歌舞伎町の実態を把握できなくなるデメリットが発生するという。
「情報交換というと誤解されますが、僕らは暴力団に協力しているのではなく、警察とも密接にやりとりするニュートラルな存在で、絶妙な位置を築いてきたんです。もし外部の進出で抗争が始まればその生態系が崩れてしまい、疑心暗鬼になる中での取材はまず不可能でしょう。特に芸能人絡みの事件は注目度が高く、警視庁は大幅に人員を割きますし、内情を知らない一般マスコミも入ってくるので、なお閉鎖的になるんです」(同)
裏社会の動きを追う記者もピリピリムードの歌舞伎町、大規模摘発でも治安の改善には至らないのだろうか?