「MAXIM KOREA」という韓国の男性誌をご存じだろうか? アメリカの男性誌「MAXIM」の韓国版で、20~30代の男性をターゲットにファッションや恋愛に関する情報、セクシーなグラビア写真を掲載する人気の雑誌だ。表紙もセクシーなモデルや女優が飾ることが多く、男心をくすぐると評判で、2010年から同誌が始めている「ミスMAXIMコンテスト」(記事参照)も注目度が高く、セクシーモデルの登竜門的な位置付けといえるだろう。
「女たちは悪い男が好きだろ? これが本当に悪い男だ」などと書かれた見出しとともに、タバコを吸う男性と、素足をテープで巻かれて車のトランクに押し込められた女性が写されている。誰がどう見ても、拉致、強姦、殺人をイメージさせる“攻めすぎた”表紙で、発売されるや否や集中非難を浴びる結果に。女性団体からの抗議はもちろん、雑誌の回収を求めるオンライン署名運動が行われ、9月3日の時点で10万人が署名する事態にまで発展してしまったのだ。
「MAXIM KOREA」を咎める声は韓国国内にとどまらず、海外にまで拡大。イギリスの「コスモポリタンUK」はネット上のコラムで、「どこから指摘すればいいのかわからないほど、数多くの失態を犯した表紙」と非難。「歴史上、最悪の表紙のアイデア」と酷評し、結婚した女性の53.8%が配偶者から暴力を受けているという2010年の韓国の調査結果を引用しながら、「韓国の家庭犯罪率がいかに高いかを考慮すれば、ますます衝撃的なグラビアだ」と皮肉混じりに指弾した。アメリカの「ハフィントンポスト」は、「性犯罪率を下げるために努力しなければならないのに、それを煽ってはならない。このようなグラビアが社会に及ぼす悪影響を考慮してほしい」と指摘。アメリカのMAXIM本社も「とても深刻な問題を含んでおり、強力に糾弾する」という立場を表明した。
まさに四面楚歌となった「MAXIM KOREA」は、発行当初こそ「問題ない」という態度を取ってきたものの、9月4日、ようやく9月号を回収、破棄することを決定。公式ホームページに編集長の謝罪文を掲載して、あらためて「犯罪行為を美化しようとする意図はなかった」と強調するだけでなく、「すでに発売された9月号によって得た販売利益は全額、社会に還元します。収益金のすべてを性暴力予防または女性人権団体に寄付します」と発表した。
「MAXIM KOREA」の対応が後手に回ったことが、今回の騒動が社会問題化した直接的な原因だが、彼らが発行当初から強気だったのには理由がある。それは、韓国刊行物倫理委員会が「MAXIM KOREA」の表紙と記事に“許可”を出していたからだ。
同委員会はその名の通り、書籍、雑誌、漫画などの有害性を判断する機関なのだが、今回の表紙については、「MAXIM KOREA」という雑誌の特性上、性犯罪の要素を推測できるにはできるが、性犯罪を美化したとは感じられない」と判断していた。つまりは正式なお墨付きをもらっていたわけなので、「MAXIM KOREA」だけに責任があるとは言い難いだろう。
今後の編集方針や自主規制が気になるところだが、セクシーなグラビアだけは守り続けてほしいと願う韓国人男性も少なくないはずだ。