中東などから欧州に大規模な難民らの波が押し寄せている問題で、ハンガリーのオルバン首相は6日、ドイツのメルケル首相とオーストリアのファイマン首相に対し、国境の閉鎖を要求した。難民の最終目的地であるドイツなどが受け入れ拒否を明確にしなければ、さらに数百万人が流入すると警告した。難民の受け入れに消極的なオルバン氏が、受け入れに寛容なドイツなどに政策を変えるよう圧力をかけたとみられる。オーストリアのメディアが伝えた。
オルバン氏は、難民のほとんどが生活向上を目指す「経済難民だ」と指摘。欧州連合(EU)では、最初に入った国で難民登録するのが原則だが、「全員がドイツ行きを望んでいる」として登録できない事態を釈明。「問題は我々の側にはない」と主張した。
ドイツとオーストリアは緊急の人道措置として5日、ハンガリーでの登録無しに難民を受け入れると決め、電車やバスを用意した。オルバン氏はこうした措置をやめ、登録していない難民を受け入れない姿勢を明確にするよう両国に求めた。
ハンガリーは南部のセルビア国境に鉄条網などのフェンスを設け、難民らの「不法越境」を阻止しようとしてきた。オルバン氏は、ドイツなどが難民に対する「国境の閉鎖」に動けば、ギリシャからセルビア、ハンガリーなどを経て北へ向かう難民が減少すると考えている模様だ。
ハンガリーはセルビアとの国境管理を強化しており6日、セルビアからハンガリーを経由してオーストリアに向かう二つの列車に難民が乗っているとして入国を拒否した。セルビアからは約1500人の難民が徒歩でハンガリーに入り、国境の施設に収容された。
一方、ファイマン氏は6日、緊急措置を「徐々に通常に戻す」との声明を発表した。オルバン氏の呼びかけに応じた形だが、「人道的な形」で戻すと述べ、難民に十分な支援をしていないハンガリーの姿勢にクギを刺した。ハンガリーとオーストリア、ドイツは国境管理をなくす「シェンゲン協定」に加盟しており、3国間の国境閉鎖は不可能だ。