英字メディア「Want China Times」が中国人民ラジオの放送として紹介したところによると、このエンジニアは同社が社員の家族や来賓向けに提供する「フリーミール」を悪用し、10人の観光客を社員のカフェテリアに案内していたという。
「フリーミール」とは、会社が提供する食事を自由に食べられる福利厚生サービス。さまざまな種類の料理を、無料で好きなだけ味わうことができる。この社員は見返りとして、観光客1人当たり20ドル(約2400円)を受け取っていたという。
なぜ、このような事態が発生したのか。その背景には「Chummy(チャミィ・伴米)」という旅行仲介サイトの存在があるようだ。自社で添乗員を派遣せず、旅行者と現地の住民とを結びつけて観光ガイドをさせるサービスである。
サンフランシスコを訪れる中国人観光客は、グーグルやアップル、ヤフー、ツイッターといった有名巨大企業の会社への訪問を希望することが多い。このためチャミィは、それぞれの会社で働く中国人従業員とのつながりを確保しており、今回のフェイスブックのケースでもチャミィが仲介を行っていた。
もちろんこのような観光客は従業員の家族でも友人でもないため、彼らを会社に招き入れることを会社は許可していない。不審者を招き入れたり、会社の機密が漏れたりすることも考えられる。このため今回の件を受けてグーグルやアップルは、チャミィのユーザーが違法に会社や構内を訪れていないかどうかの内部調査を始めているという。
ザッカーバーグに「公開書簡」を送りつける
しかしチャミィの創業者のリウ・チャン氏は、強気の姿勢を崩していない。フェイスブック社のCEOマーク・ザッカーバーグ氏に向けて、自社のサービスの趣旨を主張する公開書簡を送りつけたという。
「私たちのサービスは世界を変えたいだけであって、安全性を破壊したり経済競争を引き起こすものではありません」
チャン氏はまた、解雇されたフェイスブック社員について「会社は彼自身が説明する機会を与えるべきだ」とも発言している。
あわせて解雇されてしまった中国人エンジニアに対し、申し訳ないとの気持ちを表明するとともに、アメリカに残ることができるようビザの取得や新たな職探しを手伝うと申し出ている。