米国のサマンサ・パワー国連大使は14日、CNNとのインタビューで、ロシアがシリアのアサド政権への支援を強化していると批判し、「勝利につながる戦略ではない」との見方を示した。
シリアでは近年、過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」が勢力を拡大し、アサド政権と国際社会がISISという共通の敵に直面する構図となっている。しかしパワー氏は、「自国民を毒ガスやたる爆弾で攻撃し、デモに参加したり権利を主張したりしたというだけの理由で市民を逮捕、拷問するような政権」に肩入れしても「うまくいくはずがない」と断言した。
ロシアの対シリア介入をめぐっては、オバマ米大統領が11日、「アサド大統領は心配のあまりロシアから顧問や装備を呼び込んでいる」と指摘。14日付のロイター通信も、ロシア軍がシリアの飛行場に数台の戦車を展開し始めたと伝えた。
パワー氏は「目的のためには手段を選ばないというマキャベリズムを採り、ISISへの対応だけに集中するとしても、シリア国民の意思に反してアサド政権を支援するという戦略によって平和をもたらすことはできない。ロシアのプーチン大統領はテロ掃討が優先だと主張するが、その目的を果たすこともできないだろう」と述べた。
国際社会では最近、シリアからの難民が大挙して欧州へ押し寄せている問題をきっかけに、同国の内戦に対する関心が改めて高まっている。
この4年間で少なくとも20万人の死者が出たとされ、人権団体は31万人が死亡したと主張している。
米政権は関与に消極的との批判を受けているが、パワー氏は「批判されるべき対象はロシアやイランではないのか」と反論。両国が、国民を迫害する政権を支援し、「意図するかしないかにかかわらずテロの台頭を誘発している」と非難した。
そのうえで「プーチン大統領やイラン政権は考え方を根本的に改め、町を全滅させてテロ問題を解決しようとする作戦は非生産的だと認識する必要がある」と強調した。