今月13日、中国が申請していた「南京大虐殺文書」をユネスコが記憶遺産に登録し、中国側の反日プロパガンダが、国際的なお墨付きを得た形となった。こうしたプロパガンダで最近、目立ち始めたのが「略奪品」の返還要求だ。
返還要求を主導する組織として「中国民間対日賠償請求連合会」がある。同連合会は今年7月、日露戦争後、旧日本軍が唐代の石碑「鴻臚井碑(こうろせいひ)」を遼東半島の旅順から略奪し、現在は宮内庁が保管しているとして、返還を求めて北京の高級人民法院(高裁)に提訴した。
同連合会は、商船三井の船舶が日中戦争中の船舶賃借料をめぐって差し押さえを受けた裁判や、中国人労働者の「強制連行」に関する損害賠償訴訟などにも関与している。
今回、宮崎県の「平和の塔」で、礎石の返還を求めているのは、南京民間抗日戦争博物館とされる。
同博物館は「民間」の立場を強調するが、呉先斌館長は「鴻臚井碑」問題の提訴と同じ今年7月、「南京大虐殺」について「人類史上最も残虐で人道から外れた事件」などと発言した。中国共産党中央委員会の機関紙「人民日報」のインターネット版「人民網日本語版」が報じた。
呉氏の発言は、習近平国家主席の発言とも符合する。習氏は2014年12月、南京大虐殺犠牲者国家追悼式で「日本軍が一手に作り出したこの非人間的な大虐殺事件」とした。
そもそも、日中政府間の戦争賠償は決着済みだ。
中国政府は昭和47年の日中共同声明で「日本国に対する戦争賠償の請求を放棄する」と宣言した。この条文をめぐって日本の最高裁は平成19年4月、「サンフランシスコ平和条約と同様に、個人の損害賠償などの請求権を含め、戦争の遂行中に生じたすべての請求権を放棄する旨を定めたと解される」との判決を下した。
だが、国際社会で日本を貶めようという中国の「歴史戦」は、手を替え品を替え繰り返されてきた。ユネスコの世界記憶遺産登録もその一つだ。
「中国側からすると、自分たちの国にあった石が、塔に組み込まれ、何の説明もされていないということは受け入れられない。中国人向け訪日ツアーに宮崎を組み入れる上で、『塔の現状が障害だ』と指摘する関係者もいる」