南シナ海の南沙(スプラトリー)諸島の岩礁で中国が建設している人工島から12カイリ(約22キロ)内の海域を、米海軍の駆逐艦が近く航行するとの見通しが明らかになった。米国防総省の情報筋がCNNに明らかにした。
この話は、ロイター通信が最初に伝えていた。
米軍の情報筋がCNNに語ったところによれば、駆逐艦は24時間以内、早ければ26日夜(日本時間27日午前)のうちにも人工島付近を通過する見通し。何らかのトラブルが発生した場合に備え、上空の国際空域から哨戒機が監視する。中国には通告していないが、トラブルは予想されていないという。
カービー国務省報道官は、公海における航行の自由を示すための作戦だと説明。「こうした作戦は私自身、海軍時代に何度も経験している」「航行の自由を守るために影響力を行使することは、海軍の存在意義のひとつだ」と述べた。
同報道官はさらに「公海航行の自由というのはつまり、ある国が公海を航行する際、別の国に相談する必要がないということだ」と強調した。
南シナ海では中国とブルネイ、マレーシア、フィリピン、台湾、ベトナムが領有権を争っている。中国は今年6月、南沙諸島で進めていた岩礁の埋め立て作業が「ほぼ完了した」と発表。一方で埋め立てた人工島に各種施設を設ける工事は続けるとの方針を示した。
中国は工事について、他国に脅威を及ぼす意図はなく、海と空の航行の自由にも影響しないとの主張を繰り返してきた。
9月には米アラスカ州沖で、中国海軍の軍艦が12カイリ以内の米領海に侵入したが、米国側は国際法で認められた「無害通航」との見方を示した。
一方、米国船が人工島から12カイリ以内に入ったことはない。ただし米政府はもともとこれらの岩礁を中国の領土と認めていないうえ、岩礁を埋め立てた人工島の周囲に領海は設定できないとの立場を示している。