米国と中国が南シナ海を舞台に緊張を高めるなか、日本の海上自衛隊の警戒・監視能力が注目されている。特に、他国の潜水艦を追い詰めるP3C哨戒機と、最新のP1哨戒機の部隊は「世界一の対潜能力」と恐れられている。中国による国際法無視の暴挙が続くなか、世界有数のシーレーンを守るため、米軍幹部もその実力に期待しているようだ。
「南シナ海での自衛隊の活動は、わが国の安全保障に与える影響を十分注視しながら今後検討していくべき課題だ」
菅義偉官房長官は5日の記者会見で、こう語った。状況次第で自衛隊を派遣する可能性を示唆したものだ。ただ、「今、米海軍が行っている『航行の自由作戦』に自衛隊が参加する予定はない」と強調した。
現在、国家安全保障会議(NSC)などで議論されているのは、航空機による警戒・監視活動への参加とされる。
実は、海上自衛隊は今年6月、中国が岩礁を勝手に埋め立てて軍事基地化しているスプラトリー(中国名・南沙)諸島に近い海域で、フィリピン海軍と合同で、P3C哨戒機による捜索・救難訓練を実施している。
P3C部隊は、パイロット2人と、戦術情報の収集・運用を行う戦術航空士(TACCO)、対潜員ら11人で構成される。捜索用レーダーや赤外線暗視装置、磁気探知機、電波探知装置、音響探知機(ソノブイ)などのハイテク機器を駆使し、日本領海に近づく他国の潜水艦を追い詰める。
「旧ソ連の潜水艦隊を相手に技量を高め、それを後輩に伝承してきた職人芸のような高い技術を誇る」(海自関係者)
さらに、後継の国産ジェット「P1哨戒機」は、巡航高度と速度が約1・3倍、航続距離が8000キロで約1・2倍になった。多機能・高性能化した最新機材により、探査能力は格段に向上したとされる。
現在、南シナ海では、米海軍のイージス駆逐艦と、中国のミサイル駆逐艦がにらみ合っている。海中でも、米中の攻撃型潜水艦が熾烈な攻防戦を展開しているとされる。今後、同盟国・米国が、日本のP3C部隊やP1部隊に協力を求める可能性はありそうだ。
「航行の自由作戦」の立案に深く関わった米太平洋軍のハリー・ハリス司令官も今年6月、日本メディアとの会見で、「(南シナ海は)公海であり、領海ではない」と指摘したうえで、海上自衛隊の哨戒活動を「歓迎する」と語っている。
軍事情勢に詳しいフォトジャーナリストの菊池雅之氏は「P3C部隊の能力は、隊員の技量に加え、機体のスペックやデータも重なり、世界屈指といえる。P1部隊もすごいが数が少ないので、南シナ海の警戒・監視活動を行うとすればP3C部隊だろう。同海域は日本のシーレーンであり、『航行の自由』がなくなれば日本は立ち行かなくなる。自衛隊派遣となれば、合同訓練を行ったフィリピンに拠点を置くはずだ。整備基地の準備などを考えると、早くても来年夏以降ではないか」と語っている。