三菱重工業(7011)と三菱航空機は11月11日午前、国産初のジェット旅客機「MRJ」の初飛行を実施する。5度の延期を経ての初飛行で、インターネットサイト「USTREAM(ユーストリーム)」で初飛行の様子を生中継する。会場となる県営名古屋空港(小牧空港)は、管理する愛知県が展望デッキを閉鎖するため、見学はできない。
初飛行では、機体を製造する小牧南工場(愛知県)に隣接する小牧空港を出発し、周辺を1時間程度飛行する。小牧を離陸後の飛行空域は、静岡県御前崎から愛知県伊良湖岬にかけての遠州灘沖の太平洋上と、石川県能登半島沖の日本海上の2つを検討している。
1時間程度飛行で、真っ直ぐに飛ぶかや、左右に曲がれるかなどの基本的な操縦特性を確認し、上空で着陸状態をシミュレーション後に着陸する。
MRJの初飛行はこれまで、5度延期。直近では10月26日から30日の期間内に実施するとしていたが、操舵用ペダルの改修が必要になったために延期した。10月27日には国土交通省航空局(JCAB)の飛行前審査を受審し、29日には飛行許可を取得した。その後、高速走行試験を実施するなど、初飛行に向けた準備を進めてきた。
社内では初飛行に向けて、MRJのロゴとイラスト、ラグビーでなじみのある「One for All, All for One」のスローガンを配置したシンボルマークを制作し、10月から導入。全社一丸となって取り組むためのもので、社内で使用している。
一方で小牧空港を管理する愛知県は、当日の空港付近の立ち入りを制限。展望デッキや旅客ターミナルビル3階、空港の立体駐車場の屋上などが、11月8日から15日まで閉鎖中だ。また、旧国際線ターミナルビルを活用した隣接するショッピングセンター「エアポートウォーク名古屋」も、5階展望デッキを9日から13日まで閉鎖している。
これまでに幾度となく初飛行が延期になったことで、愛知県が国内外の事例を基に、地元の子供たちを招待するといった対応策を練る時間は十分にあった。しかし、愛知県振興部航空対策課では、安全確保や定期便の利用者への影響を理由に、空港付近では初飛行を見学せず、三菱航空機によるストリーミング配信を見るよう求めている。
航空機の初飛行など世界から注目が集まるイベント時に、空港付近での見学自粛を自治体が求めるのは極めて異例。一方、愛知県は航空宇宙産業の誘致を進めており、企業誘致により県の産業が活性化するとの考えを示している。
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