陝西省西安市で、警察官を装った男たちが、売春婦と遊んだ男性をターゲットにした脅迫容疑で逮捕された事件で、11月6日に初公判が開かれ、注目を集めている。
今年5月12日、40歳過ぎの男性が、西安の長距離列車が走る線路近くの民家で買春を行い、出てきたところを3人の男に捕まった。男たちは売春取り締まり中の警察官だと名乗り、警察手帳を見せられた男性は、買春を行ったばかりという後ろめたさもあってか、男たちに言われるまま、警察車両に乗せられた。そこで、家族の連絡先を教えることや、違反金5,000元(約9万5,000円)を支払うことなどを要求された。妻に買春がバレるのを恐れ、男性は結局、ATMで下ろせるだけの金額(4,000元/約7万6,000円)を引き出して渡してしまったという。
しかし、解放されたのち、警察官がなんの手続きも踏まずに違反金だけを取ることなどありえないと気づき、警察へ通報。その後、容疑者とみられる男たち4人が逮捕された。
犯人グループが使用していた警察手帳や車両は偽造を専門にしている業者に頼んだもので、捕まった男の中には以前強盗で3年間服役していた前科持ちもいた。男たちは「売春を行っている場所を見つけて、出てきたところを押さえるだけなので簡単だった。同様の方法で、ほかに2人の男性から金をだまし取ったが、警察に通報した様子がなかったので続けていた」と供述している。
偽警察に現金をだまし取られる事件は、ほかにも相次いでいる。
6月29日、内モンゴル自治区フフホト市に暮らす72歳の精力旺盛な老人が5月ごろ、性的サービスを行う浴場でお楽しみ中のところを、潜入捜査官を装った男に踏み込まれた。
男に、家族への連絡と留置所に勾留すると脅された老人は、偽警察ともつゆ知らず、男に9,500元(約18万円)を手渡した。その後、冷静になった老人の通報により、男は逮捕されたが、老人は一部始終を家族に知られ、息子と一緒に警察署で被害届を出すという恥ずかしい結果になってしまった。
また、10月27日には、湖北省荊州市の開発区で働くブルーカラーの男性が、白バイ隊員を装う2人の男に1,000元(約1万9,000円)をだまし取られた。オートバイで移動中に停車を促され、売買春に関する捜査だと告げられたのだという。男性は以前、友達とマッサージ嬢を買春したことがあったために、罰金5,000元(約9万5,000円)と15日間の勾留だと脅され、泣く泣く手持ちの1,000元を渡したという。犯人の男たちは、カモとする男性を見つけては「以前に買春したことがあるだろう」適当に声をかけていたようだ。
公安当局は「警察手帳で判断するのは難しいが、現場で違反金を徴収したりすることは決してない」として、安易に現金を渡さないよう注意を呼びかけている。
中国事情に詳しいフリーライターの吉井透氏によると、頻発する偽警察による詐欺事件には、この国特有の事情があるという。
「手帳や制服といった偽警察グッズが容易に手に入るということもありますが、一番の理由は、ホンモノの警察官の素行が悪いこと。日本なら、警察官が罰金をその場で減額したり、罰金をチャラにする代わりに袖の下を要求したりすることはありませんが、中国ではよくある。そのため、偽警察官が同様のことを行っても、誰も怪しまないんです」