日韓にまたがるロッテの壮大な「お家騒動」。ロッテホールディングス(HD)創業者の長男で、1月に副会長を解任された重光宏之氏が、ついに反撃に転じた。
解任は不当だとして、現社長の佃孝之氏と、日本の中核事業会社であるロッテやロッテ商事などグループ4社に損害賠償を求める訴えを、東京地裁に起こしたのだ。ロッテHDでは、長男宏之氏と、経営の実権を握る次男昭夫氏との間で主導権争いが続いている。
宏之氏は提訴した11月12日の記者会見で、「(訴訟は)グループを本来あるべき姿に戻すために、どうしてもやらねば」と説明。提訴の理由は、創業者で父の武雄氏に、現社長の佃氏が「私(宏之氏)に関する虚偽または著しく誇張された説明を行ったことが明らかになったため」だとしている。
武雄氏は佃氏に促されて宏之氏の解任に同意したが、解任に至る経緯を調査した結果、こうした虚偽が判明したと話した。武雄氏も、ロッテHD代表取締役の地位を7月に解かれ、名誉会長に棚上げされたことを不当として、人事の無効を求める訴えを起こしている。
これまで「日本=長男、韓国=次男」という体制で経営を分担してきた兄弟。2014年の日韓連結財務諸表によると、売上高の90%以上は韓国が占めており、次男の経営手腕のほうに軍配を上げる声が多い。だが、今回の提訴は「創業者である父も同意している」と兄も黙ってはいない。
とはいえ、会見での宏之氏は、報道陣から矢継ぎ早に飛ぶ質問にタジタジ。弟の昭夫氏について「7月以降、父と自分の前に顔を出していない。非常に残念だ」と話していたが、記者から「10月に父の病室で面会しているのでは?」と突っ込まれると、「病室では会っています」としどろもどろ。
提訴会見にもかかわらず、損害賠償請求額は「開示できない」の一点張りで、「何のための会見だ!」とやじが飛ぶ場面も。とにかく歯切れの悪い回答が続いた。
「自分の復帰が会社にとって重要」と主張しながら、見ていて不安になるほどの気弱な反撃ぶり。韓流ドラマに負けない見せ場が来るか。