米国、フランスなど各国が連携する過激派組織「イスラム国」(IS)掃討作戦でロシアが抜群の攻撃力をみせている。ロシア国防省は20日、4日間でISの拠点826カ所を破壊したと発表したのだ。それでもプーチン大統領は「これではまだ不十分だ」とさらなる攻撃を厳命する徹底ぶり。そして実戦投入された巡航ミサイルは脅威の性能をみせる。
国連安全保障理事会も20日、ISと戦う決意を表明する決議案を全会一致で採択、仏原子力空母「シャルル・ドゴール」もまもなくシリア沖に展開する見通しでIS包囲網が広がっている。
ロシアのショイグ国防相は20日、テレビ回線でプーチン氏に空爆の「戦果」を報告。国営通信社スプートニクによると、4日間で戦略爆撃機などが522回出撃し、海上(カスピ海など)からの巡航ミサイルが101発、1400トンの爆弾が投下されたという。
ロシア国防省は、兵士が「われわれのために、パリのために」と空爆用爆弾に書き込む映像も公開し、ロシアの存在感を世界に示す。
そんな中、世界中の軍事専門家の目をくぎ付けにするのが、ロシアの最新型巡航ミサイルだ。高度や針路を変えながら、複雑なコースをたどって目標に命中するハイテク兵器。性能は米国の「トマホーク」にも匹敵するといわれている。
ロシア空軍は長距離戦略爆撃機「Tu-160(ブラックジャック)」や、同「Tu-95MS(ベア)」などを投入しているが、公開された映像の中に驚くべきシーンがあったという。
ロシアの安全保障・軍事情勢に精通する軍事アナリストの小泉悠氏は「実戦投入されたことがない最新鋭のステルス巡航ミサイル『Kh-101』が使用されていた。Tu-160から発射したとみられる」という。
「Kh-101は射程3000キロとも5000キロともいわれ、非常に高いステルス能力を持つ最強ミサイル。シリアへの空爆ならば、射程の短い巡航ミサイルでも届く。試験的に発射したとみられるが、ロシアが高度な巡航ミサイルを持つことが明らかになった。米国にとっても脅威だろう」
巡航ミサイルは10月7日に次いで11月20日にもカスピ海上の軍艦から発射された。小泉氏は「飛行距離は約1500キロでイラン、イラクを飛び越えている。プーチン大統領は2011年から20年まで『軍の装備近代化プログラム』を推進し約19兆ルーブル(約36兆円)をつぎ込んだ。ロシア軍のレベルは一気に高まっている」と説明する。
このほか、ロシア経済紙RBK(電子版)は17日、国防省筋の話として、地中海に展開するロシア海軍の潜水艦から、ISが首都と称するシリア北部ラッカに向けて巡航ミサイルを発射したと伝えている。
世界を震撼させた無差別テロで、くしくもロシアの最新兵器の高い能力が示されたようだ。