トルコがロシアの戦闘機を撃墜したことを受け、ロシアは25日、シリアに地対空ミサイルを配備すると発表した。トルコのエルドアン大統領はロシア非難を続ける一方で、状況がエスカレートすることは望まないとも発言している。
ロシアのショイグ国防相はツイッターの投稿で、地中海に面したシリアの都市ラタキア近郊にある空軍基地に、地対空ミサイルS―400を配備すると表明した。同ミサイルの射程は250キロ。同地からトルコとの国境までは50キロ足らずしか離れていない。
ラブロフ外相も同日、ロシアのテレビ局に対し、「(トルコによる戦闘機撃墜は)計画的な挑発だった可能性が極めて大きい」との見方を示した。
これに対してトルコのエルドアン大統領は、ロシア軍機がトルコの領空を侵犯し、同国の主権が侵害されたと強調している。
ロシアのプーチン大統領はこの前日、撃墜された戦闘機は対テロ作戦を実施していたと述べ、同機を撃墜したトルコを「テロ共犯者」と呼んで非難していた。
エルドアン大統領はこの発言について、ロシア軍機が飛行していた地域に過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」はいないと述べ、「我々をあざむくな」と語気を強めた。
CNNの軍事専門家によると、ロシア軍機が飛行していたシリア北部の地域には少数派トルクメン人が住む。トルコ政府は同国と結びつきの深いトルクメン人の保護を模索している。エルドアン大統領は、この地域を爆撃する者は「我々のきょうだい、トルクメン人」を攻撃することになると語気を強めた。
ただ、トルコのアナドル通信によれば、ダウトオール首相はロシアとの関係に亀裂が生じることは望まないと言明。外務省報道官によれば、両国の外相が電話で協議し、数日中に会談を予定しているという。
トルコ側は、ロシア軍機に対して何度も警告を発したにもかかわらず無視され、同機がトルコの領空を侵犯したため撃墜したと主張してきた。
一方、ロシアの国営メディアには、現場から救出されたという副操縦士が登場し、警告は一切受けなかったと証言している。
トルコ軍は25日、ロシア機への警告を収録したとする音声を公開した。「こちらトルコ空軍。あなたはトルコ領空に接近しています。直ちに南へ針路を変更してください」と警告する内容。この音声についてロシアは現時点でコメントしていない。
撃墜された戦闘機の乗員の生死を巡る情報も錯綜(さくそう)している。同機が墜落したシリア国内の地域を拠点とするトルクメン人反体制派は、同機からパラシュートで脱出したロシア人パイロットは2人とも射殺したと主張した。
ロシア軍は、パイロットのうち1人は死亡したと見ているが、国防省の25日の発表によれば、もう1人のパイロットは救出されて無事だという。捜索救助活動に当たっていたヘリコプターも攻撃され、海兵隊員1人が死亡したとも発表した。
死亡した2人は同日、ロシアで表彰された。シリアの衝突にロシアが介入して以来、兵士が死亡したのは初めて。