ロシア軍の爆撃機がトルコ軍に撃墜されたことを受けて、ロシアのプーチン大統領は、トルコ産の商品の輸入やトルコへの旅行の制限などを盛り込んだ大統領令に署名し、経済制裁を科すことでトルコ側の出方をうかがっています。
ロシア大統領府は、シリアとトルコの国境付近でロシア軍の爆撃機がトルコ軍に撃墜されたことを受けて、プーチン大統領が28日、トルコへの経済制裁となる大統領令に署名したと発表しました。大統領令には、トルコ産の商品の輸入やロシアでのトルコ系企業の活動の制限などが盛り込まれていて、今後、ロシア政府が対象となる商品や企業を決めるとしていますが、年間の輸入額が日本円で2000億円を超える農産物も対象になるのではないかという見方が出ています。
また、ロシアから年間およそ400万人の旅行客がトルコを訪れるなか、大統領令はロシアとトルコを結ぶチャーター便の運航を禁止し、旅行代理店に対しトルコ行きのツアーの販売を控えるよう指示しました。
ロシア政府は、26日の閣議で両国間の大型プロジェクトであるガスパイプライン計画の凍結なども検討するとしていましたが、まずは謝罪を求めて経済制裁を科すことでトルコ側の出方をうかがった形です。
これに対し、トルコ外務省は、28日、国民に、ロシアへの不要不急の渡航を控えるよう呼びかけ、ロシアとトルコの応酬が続いています。
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トルコの対ロシア輸出
トルコにとってロシアはドイツに次ぐ2番目の輸出先で、去年の輸出額は日本円で7200億円余りに上りました。輸出品目として多いのは農産物や繊維製品、それに自動車などで、特にウクライナ情勢を巡ってロシアが去年8月、欧米からの農産物などの輸入を禁止して以降、トルコは、野菜などのロシアへの輸出を伸ばしています。トルコでは、今回、制裁の対象に農産物も含まれた場合、経済への打撃は大きいと懸念する声が出ています。
石油輸入を巡っても非難の応酬
ロシア軍の爆撃機がトルコ軍に撃墜されたことを受けて、ロシアはトルコが過激派組織IS=イスラミックステートから石油を購入して資金面で支援していると主張し、これを否定するトルコとの間で非難の応酬が続いています。
ロシア大統領府のペスコフ報道官は28日に放送された国営テレビとのインタビューで、過激派組織ISからトルコへ石油が送られていると主張していることについて、「確かな情報があり、関心を持っている」と述べました。そして、「エルドアン大統領の娘婿が新しいエネルギー相に就任した」と指摘し、政権ぐるみでISから石油を購入していると分析していることを示唆しました。
一方、トルコ政府は「テロ組織から石油を買うほど無神経ではない」とロシア側の主張に真っ向から反論し、両国の間で非難の応酬が続いています。