四川省メディアの成都商報によると、成都医学院第一附属医院(病院)で26日午前、誤射により女性の頭部に撃ちこまれた散弾36発の摘出を試みる手術が行われた。25日午後8時ごろ、自宅内においていた散弾銃を2歳の娘が誤射したという。手術は基本的に成功した。
記事は、事故が発生した家の所在地には触れていない。散弾銃は女性の夫が鳥を撃つために使っていたという。事故当時は、室内に放置していた。女性は銃に背を向けており、娘がいじりはじめたのに気付かなかった。
女性によると、いきなり「ダン!」という音がして、頭を後ろから強い力で前に押されるような感じがした。次に、頭全体が熱く感じた。手で触さわると、血がべっとりとついた。夫があわてて走ってきて、娘から銃を取り上げた。その時になって、散弾銃の誤射と分かった。分かったとたん、がまんできないほど痛くなった。
女性は成都医学院第一附属医院の救急科に運び込まれた。診察した医師は「頭蓋骨を貫通した散弾がなかったのは幸いでした」と説明。重要な血管の損傷もなかった。しかし大量の散弾が頭部にあると、感染症が発生して危険な状態になる恐れがある。そうなってからでは遅い。手術が必要だった。
問題は、手術法だった。医師はレントゲンを照射しながら手術することにした。頭部を長時間にわたって被ばくさせる問題があるが、36発もある散弾の位置を正確に知り、メス入れによる傷も最少に抑えられる利点を重視して決断した。いずれにしろ、出来る限り迅速に執刀せねばならない。
女性には局部麻酔をかけた。意識もあり呼吸も自発的だ。執刀したのは文科医師。散弾を十数個摘出したところで、女性が痛がりだした。「もう、やめてください」、「怖い」と泣きながら訴える。文医師は手術を進めながら女性に「頑張りましょう。あなた自身のためですよ」、「安心してください。大丈夫ですよ」などと励ましと慰めを続けた。
手術は、医師にとっても「健康上のリスク」があった。散弾がめり込んでいたのは、女性の右側後頭部だ。女性は耳から下を、鉛の入った分厚い防護服で覆っていた。医師は胸部分までの防護用の前掛けを突けていただけで、手や頭部は被ばくし続ける。しかし患者を救うためには散弾を摘出せねばならない。リスクを覚悟で手術に臨んだ。
手術は3時間で終了した。X線を照射しながらの手術としては、異例の長さだった。散弾35個の摘出に成功。1つは位置の特定が難しく断念したが、もう1度手術をして摘出すればよいという。
文医師はX線防護のための、重さ20キログラムの前掛けをはずした。その下の服は、汗でぐっしょりと濡れていた。女性は危険な状態を脱し、容体も安定しているという。
女性は娘の誤射について「大人の不注意だったとしか言いようがありません」と語ったという。
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◆解説◆
中国は1996年施行の「槍支管理法」で、銃の所持と使用を厳しく制限している。軍や警察以外に銃を扱うことが認められるのは、省などの林業部門が認める狩猟場や遊牧地区だ。ただし、指定された場所以外への持ち出しは禁止されている。スポーツの射撃競技用の銃も、厳しく管理する規則が定められている。
ただし同法施行以前には銃の所持がかなり「野放し」状態だった。各地の警察は時おり「所持している銃を警察に引き渡す」キャンペーンを実施しているが、一般人が隠し持っている銃はまだかなりあるとの見方もある。銃を何らかの目的で「自作」するケースもあるとされる。