靖国神社(東京都千代田区)の公衆トイレで、大きな爆発音がして天井に穴が空いた事件で、韓国内に事態の推移を危惧する声があるという。警視庁公安部の調べで韓国人男性の関与が浮上しているが、韓国には容疑者の引き渡し拒否を容認するようなムードがあり、日本発の国際世論によって「韓国=テロ容認国家」と認定されかねないからだ。米国も不信感を募らせている。最新情勢について、ジャーナリストの加賀孝英氏が迫った。
「11月の首脳会談を受けて、日韓関係が改善に向かいつつあっただけに、朴槿恵(パク・クネ)政権周辺にも『厄介なことが起きた』と受け止めている人はいる。国内世論と国際世論の反応に怯え、頭を抱え、身構えている」
韓国のマスコミ関係者はこう語った。
ご承知の通り、先月23日、新嘗祭や七五三などの参拝客でにぎわう靖国神社で事件は起きた。公衆トイレの個室天井に穴が開き、周囲が焼き焦げ、天井裏からは固形物が詰められた金属パイプや、韓国製の乾電池、電線、デジタルタイマーなどが発見された。パイプ爆弾が不発だったとみられている。
警視庁公安部は、防犯カメラや宿泊先のホテルなどの捜査から「容疑者は30歳前後の韓国人男性」と特定。現在、裏付け捜査を進めている。
旧知の警察幹部は「爆発物が本当に爆発していたら、大惨事になる可能性があった。あの日は大勢の子供たちも参拝していた。これはテロだ。断固許すことはできない」と怒りをあらわにした。
公安当局幹部は次のように語る
「犯行は、パリ同時多発テロの10日後に決行された。犯行前日(11月22日)、安倍晋三首相はマレーシアの首都クアラルンプールでの記者会見で『非道卑劣なテロ行為を断固非難する』と断言した。計画的に、過激派組織『イスラム国』(IS)のテロを偽装した疑いもある。『安倍首相の発言でISのテロが起きた』と日本を混乱させ、安倍政権を攻撃させようとしたのではないか」
日本のメディアが「韓国人男性の関与」を一斉に報じた3日、菅義偉官房長官は記者会見で「一般論として捜査協調、要請も含め、日本は法と証拠に基づいて適正に捜査を進めていく」と語り、韓国側に情報提供や身柄の引き渡しを求める考えを示唆した。
ところが、その韓国が「ふざけるな!」と言うしかない状態なのだ。
公共放送KBSは3日、「日本国内の右翼たちの間では、韓国人や中国人のテロにしようとする動きがある」といい、事件が「日本の謀略」かのように報じた。朝鮮日報(日本語版、4日)も社説に「韓国と日本は『犯罪人引渡し条約』を結んでいるが、日本が引き渡しを要求してきたとしても、必ず受け入れなければならないというものではない」と記した。
韓国外務省は、海外安全情報などを知らせるウェブサイトで、韓国人に、日本で靖国神社や右翼団体のデモに近づくことを「危ない」として自制するよう呼び掛けた。あきれた。被害者ヅラではないか。
もちろん、韓国内にも常識的人物もいる。
冒頭のマスコミ関係者は「韓国では『靖国神社=反日のシンボル』とみられている。国内世論的には容疑者の引き渡しは簡単ではない。といって、日本が確実な証拠を示してきた場合、それを拒否できるのか。韓国が引き渡しを拒否すれば、日本から『韓国はテロ容認国家だ』と国際社会に発信される恐れがある」と懸念を示した。
日韓の同盟国である米国はどうか。米国は韓国にあきれ果てている。
米情報当局関係者は「米国は、韓国のテロに対する認識や対応に不信感を持っている。リッパート駐韓米国大使が今年3月、『親北』活動家に襲撃された。襲撃犯は駐韓日本大使を襲ったテロリストだった。そんな人物を野放しにするなど、重大な過失だ。米国は今でも激怒している。世界がテロと戦っているなか、韓国が容疑者の引き渡しを拒否すれば、世界が『韓国=テロ容認国家』と認識せざるを得なくなる」と語った。
日本政府は4日、国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部を官邸で開き、パリ同時多発テロを踏まえた対応強化策を決定した。海外情報の収集と分析に努めるプロ集団「国際テロ情報収集ユニット」を外務省に設置し、情報収集の統括と共有を図る各省幹部で構成する幹事会を官邸に設ける。両組織は8日に発足する。
改めていわせていただく。卑劣なテロリストを絶対に許してはならない。「テロは許さない」という揺るぎない決意を示すためにも、政府は断固たる態度で韓国に臨んでもらいたい。
■加賀孝英(かが・こうえい) ジャーナリスト。