米政府の当局者が10日、過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」への対抗措置として、資金面で打撃を与えるための具体的な取り組みを明らかにした。
シュビン米財務次官代理(テロ・金融犯罪担当)がロンドンで行った異例のスピーチの中で語ったところによれば、まず米国はイラク政府と協力し、ISIS支配地域にある約90行の銀行を閉鎖したという。ISISはこれらの銀行を管轄下に置くことで、2014年だけで10億ドル(約1220億円)の資金を手にしたとみられている。
シュビン次官代理はこれらの銀行について、たとえ建物が残っていたとしても、すでに世界の金融システムからは遮断されていると説明。このためISISにとって欠かせない軍事・通信・石油生産に関連する機材の購入をある程度、妨害できているはずだとの見方を示す。
また米国は、国際金融システムへのアクセスを断つため、ISISと関係のある30人以上の金融関係者らを制裁対象に加えた。
このほかにも隣国との国境を封鎖することで、国境の向こうで決済を行ったり、金融機関に資金を預けたりすることを難しくした。資金の流れを断つという意味で特に重要なのがトルコ国境の封鎖だという。
ISISは現時点で、世界でもっとも潤沢な資金をもつテロ組織だ。昨年には、支配地域の銀行から奪った10億ドルに加え、石油輸出や税金、身代金などでさらに10億ドルを手にした。
支配地域の人口は800万人に上り、そこから上がる税収は膨大な金額になる。
米財務省は世界で30以上の国々や組織と協力し、ISISの資金の流れを断とうとしている。
また、ISISの石油収入を断つため、米国などの有志連合はISIS支配地域の石油関連施設への空爆を続けている。