日本で落し物をしても、必ず見つかるという話はよく聞いていたし、私自身も実際に体験した。新千歳空港でなくした「JRパス(※外国人観光客を対象とした乗り降り自由の特別乗車券)」が遺失物預り所に届けられており、後で札幌駅まで送ってもらって無事に手元に戻ってきたのだ。
そんな経験をしていたせいもあり、私は日本ですっかり油断していた。悲劇はそういうときに限って降り掛かるもの。旭川駅の近くの百貨店で買い物をし終え、荷物をロッカーに預けたときに、今度は携帯電話が見当たらないことに気付いた。探そうとしたが、バスの出発時間が迫っている。どうしよう!?JRパスの一件から、私の心臓は強くなっていた。意を決してバスに乗り込み、戻ってきてから探そうと決めた。実はこの決定は根拠のない自信によるもので、さらに言えば日本人に対する信頼でもあった。
結果はどうなったか。雪山から戻ってきてから、閉店間際の百貨店に駆け込んで尋ねたが、届けられていないとのこと。ガッカリしていたときに、警備員のおじさんが近くの交番で聞いてみるよう身ぶり手ぶりで勧めてくれた。そしてなんと、私の携帯電話はまさにその交番に届けられていたのだ。どうやら、私の日本人に対する信頼に間違いはなかったようだ。