日中両国でガイドをする名古屋学院大学修士の王さんはネットで中国人の日本旅行の理由についてアンケートを実施したところ、「田園風景を愉しむ」や「文化、芸術の鑑賞」が「ショッピング」を超えた。指導の秋元教授は「爆買いのみに注目が集まりがちだが、このアンケート結果は中国観光客向けのサービス改善のきっかけとなるかもしれない」と評価している。
王さんは専門学校で日本語を勉強したのち、上海で日本人観光客向けのガイドとなり、2007年に訪日してからは中国人観光客向けのガイドとなった。2014年春から修士にすすみ、中国人旅行客をテーマに研究している。
昨年12月、王さんはSNSやEメールを通じて日本旅行に興味をもつ120名を対象にアンケートを実施した。質問内容には「日本旅行を選ぶ理由」や「体験したいこと」など12項目が含まれる。回答した115人の中で半数以上が30代で、大卒の学歴が7割を占めた。年収は19万元(約360万円)以下が7割で、そのうち訪日経験がある人が3割を占めた。
アンケートの結果、日本へ旅行する理由として最も多かったのが「田園風景を愉しむ(29%)」で、その次が「伝統文化、芸術の鑑賞(26%)」、「ショッピングに便利」は15%だった。
王さんは山口百恵主演の「赤いシリーズ」や「おしん」などの日本のテレビドラマが中国で放映され、中国人が思い描く日本の風景が美しい田舎の田園風景であり、中国人観光客はそのような景色の中でリラックスしたいと考えているのかもしれないと分析している。
また王さんは回答者が伝統文化や芸術に関心を示している点については、日本の古代建築や美術作品は保存状態が大変良く、中国では「唐宋文化は日本にあり」と言われているほどだという。それ以外にもアニメの「一休さん」の影響で金閣寺などが人気スポットになっている。
観光地で最も人気があるのは北海道で31%を占め、次に東京から富士山、京都、大阪への「黄金ルート」が29%と高い支持を受けている。日本に訪れたことのある観光客はますます増加の傾向で、黄金ルート以外の観光地に関心を示す人々がだんだん増えてきている。また阿寒湖などの北海道東部に人気が集まるのは中国で人気を博した映画「狙った恋の落とし方。」(原題:非誠勿擾)の影響が大きいとした。
「体験したいこと」では温泉が24%で1位、次が富士山観光(21%)とお花見(19%)だった。「食べたいもの」では神戸牛(16%)がトップとなり、寿司(15%)、さし身(14%)、タラバガニ(14%)と海の幸の人気が高い。
王さんは中国人と日本人は同じように美しい風景を見ながら温泉でリラックスしたいと考えているが、各地の観光地や医療観光など成長が見込まれる分野での宣伝に力を入れれば、新たなニーズを開拓できるだろうと分析している。