韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領の名誉を傷つけたとして在宅起訴された産経新聞の加藤達也前ソウル支局長に対する無罪判決について、米国務省のカービー報道官は17日、「名誉毀損(きそん)に関して無罪とした判決は承知している」と述べるにとどめた。
韓国での言論の自由をめぐる論評は控えた。
国務省は今年6月に発表した2014年版の国別人権報告書で加藤前支局長の在宅起訴を取り上げて、韓国の人権状況について「厳格な名誉毀損に関する法律が報道の自由を制限している」と指摘していた。
無罪判決を受けて韓国による人権状況の改善に向けた取り組みを尋ねられたカービー氏は「いかなる国の個別の人権状況の詳細にも立ち入らない」としたうえで、「報告書にあることが全てであり、米国として見解や懸念は表明してきた」と述べた。
一方、米政府系メディア「ボイス・オブ・アメリカ」(電子版)は17日、在宅起訴は「韓国で言論の自由が損なわれていることに関し、人権団体からの批判を招いた」と指摘。セウォル号沈没事故後に支持率が低下した朴氏が「自らのイメージを守るために法を悪用した」との政権批判があることを紹介した。
また、米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は17日、「朴政権は、望まない報道を沈黙させようとして法的手段を使い、批判されてきた」と指摘。さらに、「記者は、彼らの仕事をすることを通じて犯罪対象になってはならないと固く信じる」とした、国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウオッチ」幹部のフィル・ロバートソン氏の論評も掲載した。
一方、米紙ウォールストリート・ジャーナル(同)も17日、「(加藤氏を)起訴したことは東京とワシントンから非難されてきた」と指摘するとともに、「無罪判決は日韓両国の緊張緩和に資する可能性がある」と論じた。