南米ブラジルで蚊が媒介する感染症と新生児の小頭症の因果関係が指摘され、衛生当局が異例の勧告を出して妊娠を避けるよう呼びかけている。
ブラジルでは今年に入って小頭症が疑われる症例が20州で2400例以上も報告され、昨年の147例に比べて激増した。乳児29人の死亡についても専門家が関係を調べている。
特に東部のペルナンブコ州では900を超す症例が報告され、これまでに6州が非常事態を宣言した。
小頭症は脳の発育が遅れる神経疾患で、頭が極端に小さい子どもが生まれ、深刻な発育障害が残ったり、幼少時に死亡したりすることもある。
小頭症の症例が急増した時期は、ブラジル国内でジカウイルスが確認された時期と重なっていた。母親が妊娠初期に、微熱や発疹、頭痛といったジカ熱の症状を発症していたことも分かった。
ブラジル保健省は11月28日、検視の結果、小頭症の乳児からジカウイルスが発見され、同ウイルスと小頭症との関係が確認されたと発表。ジカウイルスが小頭症を発症させているのかどうかの確認を含め、詳しい因果関係についてさらなる調査が進められている。
患者が多発しているペルナンブコ州の小児感染症専門医は、「極めて個人的な見解だが、現時点では不確実性が高く、もし可能であれば妊娠を避けるよう勧告している」と述べ、「こうした新生児は生涯にわたって特別な看護が必要になる。そのストレスは想像を絶する」と指摘した。
小頭症の症例は当初は北東部に集中していたが、今では南部のリオデジャネイロやサンパウロでも患者が確認され、ブラジル全土に不安が広がっている。
ジカ熱はアフリカ東部のウガンダで1940年代に発見され、アフリカ各地や南太平洋、アジアに広がった。ブラジルで発見されたのは今年に入ってから。昨年のサッカー・ワールドカップで同国を訪れたアジアや南太平洋からの観光客によってウイルスが持ち込まれたとの見方もある。
ジカウイルスは、熱帯地方に繁殖するネッタイシマカが媒介する。この蚊はデング熱や黄熱病などを媒介することも分かっている。
ジカ熱は症状が出ない場合もあり、感染を見極めるのが難しい。ブラジル保健省は、今回の流行では50万~150万人が感染したと推計している。
世界保健機関(WHO)や全米保健機構(PAHO)も、ブラジルなど中南米諸国のジカ熱流行に関する警戒情報を出して注意を呼びかけた。
2016年オリンピックが開かれるリオデジャネイロでは、900万あまりの世帯を当局が訪問して蚊を発生させる水たまりを除去するなどの対策に乗り出している。ジカ熱の感染が疑われる妊婦391人については経過を観察中だという。
これから夏を迎えて気温が上がり、雨量が増えるブラジルでは、ジカ熱の急増も懸念されている。