貨物列車だけを掲載した「貨物時刻表」が、ひそかな人気を集めている。もともと運送業者用で「乗れない列車の時刻表」なのに、鉄道関連書籍では売り上げ上位の常連だ。写真撮影するファンらの必需品になっている。
貨物時刻表は、公益社団法人「鉄道貨物協会」が1980年からほぼ毎年刊行し、全国で1日約500本走る貨物列車のダイヤをJR、私鉄ともに網羅している。駅で荷物を積み下ろすトラック運送業者に使われていたが、91年、鉄道ファン向けに一般販売を始めた。
当初の部数は5千部。年々人気が高まり、今年3月の最新版は2万500部を発行した。取り扱う書店は全国で43店と、この10年で4倍に。書泉グランデ(東京都)では鉄道関連で常にトップ3に入る売れ筋で、「自宅用と車載用に複数買う方も多い」(広瀬祐理フロアリーダー)という。
内容は旅客用と異なる。路線図は、隅田川駅(東京都)や東京貨物ターミナル駅といった耳慣れない駅がある一方、山手線は西半分しかない。貨物列車が走る路線だけだ。駅の発着時刻には「コンテナ」「石油」など積み荷が明記され、全国の列車の動きを線で記したダイヤグラムもある。
鉄道写真歴35年の札幌市の会社員、石原幸司さん(45)は「何時に通るかによって光のあたり方が変わる。アングルを決めるのに欠かせない」。読者の写真投稿ページもあり、13年からは優秀作を載せたカレンダーも付録につく。