『行列のできる法律相談所』(日本テレビ系)に出演している"美人弁護士"大渕愛子氏が、懲戒請求を受け、東京弁護士会が審査しているという。
大渕氏は、DVを理由に幼子を連れて離婚したAさんから元夫との示談交渉を依頼されていた。Aさんは生活苦から弁護士費用を日本司法支援センター(通称、法テラス)の費用立替制度を使ったが、大渕氏は、法テラスによる立替分とは別途、着手金7万3500円と毎月の顧問料を取り立てていた。法テラスの立替制度では、これは認められていない行為。大渕氏はAさんから返金を求められたが拒否した(のちに東京弁護士会の副会長が大渕氏に促して全額返金)。
これ以前にも、大渕氏は、依頼者から弁護士費用を支払ったにもかかわらず訴訟が提起されなかったなどとして、損害賠償と慰謝料支払いを求める裁判を起こされるなどトラブルが絶えず、昨年9月には2名の元依頼者が「被害者の会」を結成していた。
こうしたトラブルについて、大渕氏は世間に広く説明する義務があるだろう。法のもと、依頼者の利益を守るのが弁護士の本分であるはずだ。事実だとすれば"弁護士失格"の誹りは免れまい。そして、こうした人間を"最強弁護士軍団"などといって世間に広めた『行列のできる法律相談所』の社会的責任も問われるところだろう。
だが、『行列~』に出演する弁護士は、この大渕氏以外にも、不祥事を起こしたり、雑誌にスキャンダルを書き立てられた者が多い。
たとえば、のちに自民党の参議院議員になった丸山和也弁護士も、『行列~』出演時には週刊誌に相談女性へのセクハラ騒動を書き立てられたり元愛人女性から「独身だと嘘をついた」などと告発されたり、下世話な話を挙げて行けばきりがない。
カネがらみでも、2002年、丸山氏が化学薬品メーカーの国際仲裁事件を担当した際、共に事件を担当したオーストラリア人弁護士から、約束した報酬の半分しか受け取っていないとして提訴された。08年、東京地裁は丸山に対し報酬の残額1000万円の支払い命令を出し、丸山氏は敗訴している。
ただ、『行列~』弁護士がもっと問題なのは、政界志向、権力との癒着体質をもっている弁護士が多いことだろう。テレビを使って知名度を上げ政界に進出した橋下徹前大阪市長、自民党の丸山和也参議院議員はもちろんだが、現在でもレギュラーを務める"法廷に笑顔はいらぬ、冷静沈着"こと北村晴男弁護士は、政治臭の強い人物だ。
07年の自民党総裁戦では、福田康夫と争った麻生太郎の応援にかけつけ、「この総裁選で麻生太郎が簡単に負けるようであれば、明日から自民党の悪口を言い続けるんだ! こんな国会議員はみんなやめちまえ!」と咆哮。自民党タカ派シンパを見せつけた。
しかも、北村弁護士は中部電力の原発CMに出演し、まともに機能する目処がまったくつかない核燃料サイクルを賞賛、テレビ番組でも"現在の生活レベルや産業を維持するためには火力発電だけでは無理"と熱っぽく擁護するなどバリバリの"原子力文化人"でもある。
"原子力文化人"といえば、この人もそうだ。いまもワイドショーなどでコメンテーターとして活躍中で、11年まで『行列~』のレギュラーだった住田裕子弁護士である。彼女は、新聞や雑誌などの数々の"原発広告"に出演し、かつて原子力安全委員会の専門委員などを務めるなど、推進派の旗振り役だ。
その反原発派に対する態度は、普段テレビでは見せない高圧的なものらしい。「週刊文春」(文藝春秋)11年3月31日号で、プルサーマルに反対した佐藤栄佐久福島県知事(当時)が、原発ムラ内部での住田氏とのやりとりを告発している。
「04年12月、私は原子力長期計画策定会議に招かれました。そこで、『フランスでは16年間、ドイツでは20年も議論した上で原子力政策を決めているのに、あなた達は来年結論を出そうとしている。余りにいい加減過ぎる』と噛みついたのです。会議のメンバーは7割位が電力関係者なので、私は参加者達に『あなた方は国からマインドコントロールされているんじゃないか』と糾すと、タレントで弁護士の住田裕子さんから『失礼ね』と吐き捨てられました。これは福島県の議事録にも残っています」(「週刊文春」文藝春秋/11年3月31日号)
さらに、ヤメ検弁護士である住田氏は、検察官時代には、埼玉県で中学3年生の女子生徒が絞殺体で発見された草加事件の主任検事だった。この事件では、10代の少年5人が逮捕され家裁の決定で少年院へと送致されたが、その後の民事裁判では少年らに事実上の無罪判決が下されるなど、冤罪の可能性が極めて高い。住田弁護士が本当に"心優しき法律の母"ならば、検察としてその青春を奪ってしまった元少年たちに正面から謝罪すべきだろう。
こうして「『行列』弁護士」の事件簿をざっと振り返ってみると、どう見ても"最強弁護士軍団"というよりも、たんに"目立ちたがり屋のセンセイ"="権力大好き人間"であるようにしか思えない。今回の大渕弁護士の懲戒騒動の件にしても然り。
こうしたタレント気取りで、権力の走狗でしかないセンセイたちを、間違っても"弁護士の代表"であるかのように勘違いしてはならない。