世界的な格付けガイドブック「ミシュランガイド京都・大阪2016」に掲載されるなど、ワールドワイドな存在になりつつある大阪名物「たこ焼き」。
そんななか、ようかんやラムネなどのたこ焼き関連商品がインターネット上を騒がせている。気になる評価は「日本一まずい」…。あまりのまずさにネット上に“被害者の会”が設置されたほどだ。それなのに、なぜかロングセラーを続けているという。最近では、「たこ焼きけん玉」が外国人観光客たちの間で注目されており、驚きの“たこ焼き商法”はとどまるところを知らない。(上岡由美)
「テロ行為」的なまずさでもヒット商品
「訴えたいくらいマズイ。ちょっとした罰ゲームになるくらいマズイ。ちょっとしたテロ行為だよ」
「青のりと羊羹(ようかん)と、隠し味のソースが誰ひとりとして協力していない」
ネット上には、「たこ焼きようかん」(410円)を食べた人たちの率直な感想が飛び交っている。
扱っているのは、大阪・道頓堀などでユニークな大阪土産を販売する「なにわ名物 いちびり庵」だ。
「お土産の王道はようかん。ところが、ようかんを扱っていなかったので、それなら自分らで作ろうとなった。そのときにパッと浮かんだのが『たこ焼きようかん』でした」
「なにわ名物開発研究会」会長も務める野杁(のいり)育郎社長は、開発に至った経緯をこう説明する。ソースベースの味にこだわり、平成10年に完成した。生臭くなるとの理由でタコは入っていないという。発売と同時に話題になり、ネット上ではあまりのまずさに“被害者の会”が結成されるほど。それでも、なぜか多いときで1カ月に1万本以上が売れるヒット商品になった。なかには、「結婚式の引出物に使いたい」との注文があったことがあり、そのときは「本当に良いんですか?」と念を押したという。
実際に食べようとしてみると、ソースの香りがほのかに漂うようかんに心が折れそうになる。しかし、意を決して口に入れてみると、白あんの甘さが広がり、青のりの風味が押し寄せてくる。やや塩気が強い気もしたが「おいしいです」。すると、野杁社長は「10人食べて、おいしいと言ったのは1人だけ。変わっているなあ」と苦笑いしていた。
ちなみに、同店では「たこ焼ききゃんでぃ」という商品も扱っており、こちらは「普通においしい」(野杁社長)とか…。
メーカーも認めた「おいしくない」
「味は(多分)普通のラムネ。たこ焼きっていうかソースのにおいがする。結論としては不味(まず)いです」
「ソースといえばソースなんだけど、なんかコーラの出来損ないのような味」
たこ焼きようかんに負けず劣らず、ネット上で「まずい」と話題を振りまいているのは「たこ焼風ラムネ」(124円)。ラムネ生産量日本一を誇る清涼飲料水メーカー「ハタ鉱泉」(大阪市都島区)が平成20年4月に販売した。
れっきとした「ソース風味」に仕上げており、わざわざ「たこ焼は入ってまへんで」の注意書きまで添えられている。
こちらも実際に飲んでみた。「ポンッ!」と栓を開けると同時に、ソースの香りが漂ってきた。恐る恐る口に含むと、普通のラムネのような気がするが、ショウガとソースの風味が微妙に残る味わいは、かなり好みが分かれそうだ。
同社の担当者は「確かにおいしくないという声は多いです」と認める一方で、定期的に購入する人もいるというから分からない。さらには、購入客のほとんどが「飲みたくないなあ」と言いながら、土産用とは別にちゃっかりと自分用をキープしているという。
ちなみに、同社では「キムチ風ラムネ」も販売しているが、こちらは「一口飲んで吐きそうになった」「小さなお子さんには決して飲ませないでください」など、ネット上での評判は散々だ。
たこ焼きグッズは食品だけではない…
このほかにも、たこ焼きをトッピングした「たこ焼きうどん」、粉ものでは珍しい「たこ焼き缶詰」に「たこ焼きキャラメル」など、たこ焼き関連商品が次々と生み出されている。
今年10月には食品ではないが、新たなたこ焼きグッズが誕生した。その名も「たこ焼きけん玉」(2538円)。木製の玉の部分は、たこ焼きそっくりに彩色され、グリップ部分にはご丁寧にもタコのイラストまで描かれている。
発売したキャラクター玩具・雑貨メーカー「パンクス」(大阪市中央区)によると、けん玉は海外でも若者たちの間でクールなスポーツとして注目されていることから、新しい大阪土産として企画した。オブジェとしても見栄えがいいためか、海外の観光客たちの間で人気を集めている。
同社ではたこ焼きのほかにも、「開運(だるま)」「忍者」「歌舞伎」「舞妓(まいこ)」の計5種類のけん玉を扱っているが、一番人気はだるまだという。
大阪らしいユニークな発想で、次々に生み出されていくたこ焼き関連商品。今度はどんなものが出てくるか想像もつかないが、「話のネタ」になることだけは間違いない。