韓国造船業の「ビッグ3」である現代重工業、大宇造船海洋、サムスン重工業は、2014年と2015年で計10兆ウォン(約1兆290億円)ほどの営業損失を計上すると見込まれています。海洋プラント事業の大赤字が主犯ですが、その原因としてはエンジニアが足りない中で過剰に受注して工期を守れなかったこと、原油価格の急落で発注側からの契約キャンセルが相次いだことなどが挙げられています。
しかし先ごろ、韓国造船業界が構造的なわなに陥っているとの分析が示され、話題を集めています。分析したのはノルウェーのスタヴァンゲル大学に留学中の韓国人、アン・ビョンム氏。アン氏は昨年6月中旬、韓国とノルウェーの造船エンジニアへのインタビューを基にした英文の修士論文をオンラインで公表し、韓国企業における儒教・軍隊文化が海洋プラント事業に悪影響を与えたと指摘しました。トップダウン式の厳しい上下関係、排他的な組織風土などが大きな障害になっているというのです。
海洋プラントは商船と違い、建造工程が複雑で設計の変更も随時発生します。そのため、設計部署と生産部署、造船所と発注企業が緊密に連携し、工程や設計の変更に柔軟に対応していくことが重要になります。しかし、トップダウン式の企業体質では現場の声が封じ込められ、試行錯誤が繰り返される可能性が高くなります。また、部署内や会社内では結束力が強くても、ほかの部署や他社とはコミュニケーションを十分にとらないところも欠点です。こうしたことで協業がなかなか進まないと、論文は指摘しています。
論文はまた、韓国と欧米の文化的な違いも問題を悪化させていると分析しています。発注側の欧米人はストレートで具体的な単語を使う一方、韓国人は前後の話が分かっていないと理解できない単語をたくさん使うため、プロジェクトを進める中で不要な誤解がしばしば生じるというのです。ある大手造船会社の関係者は「現場で働いたことのある人なら誰でも共感できる内容。造船業界はもちろん、ほとんどの韓国大企業が抱える共通の問題でもある」と話しています。