アルカイダ系過激派組織「シャバブ」は3日までに、米国のイスラム教徒に向けた新たな勧誘ビデオを公開し、米国が長い人種差別の歴史のある国だとして、イスラム教徒のコミュニティーに帰依するよう呼びかけた。この勧誘ビデオの中には、米大統領選に出馬表明している実業家のドナルド・トランプ氏の反イスラム発言も使用されている。
アフリカ・ソマリアに本拠を置くシャバブによるとみられるビデオでは、公民権運動の指導者マルコムXの当時の映像を使用。トランプ氏の音声も使い、米国は人種差別的な社会だとしている。
CNNではこのビデオの信憑性(しんぴょうせい)について確認できていない。この件について、トランプ陣営からコメントは得られなかった。
トランプ氏は、カリフォルニア州サンバーナディノで起きた銃乱射事件を受け、「何が起こっているのか我が国の指導者が把握できるまで、イスラム教徒の米国入国を完全に禁止する」ことを望むと述べていた。ビデオでは一部を除き、この発言をそのまま流している。
ビデオではまた、ミズーリ州ファーガソンやメリーランド州ボルティモアで最近相次いでいた、警官による黒人射殺や暴力などの映像も放映。これが米国のイスラム教徒の運命だとしている。
米国生まれで、イエメンのアルカイダ系テロ組織「アラビア半島のアルカイダ(AQAP)」を率いていた、アンワル・アウラキ師の生前のビデオメッセージも抜粋。米国のイスラム教徒の迫害を予言する内容となっている。同師は2011年、米軍の無人機攻撃で死亡していた。
トランプ氏の反イスラム教徒発言をめぐっては、民主党から大統領選に名乗りを上げているヒラリー・クリントン氏が先月、イスラム系テロ組織の宣伝に利用されていると指摘。だが、この主張はこれまで裏付けられていなかった。
ベン・ローズ大統領副補佐官(国家安全保障問題担当)は今回のビデオについて、「いかなる形であれ、米国がイスラム教と戦争しているとの考えを支持する内容を示唆すれば、テロ組織に利用される恐れがある」「米国はテロリストと戦っているのであって、イスラム教と戦争しているわけではない」と述べた。