JR東日本の車両基地構内で昨年11月、「運転士体験」イベントに参加していた幼児がハンドル操作を誤り、約9メートル先の車止めに向かって電車が最大加速するトラブルがあったことが26日、分かった。添乗していた運転士がすぐブレーキをかけて停止したが、構内にATS(自動列車停止装置)は設置されておらず、専門家は「車止めに衝突する可能性もあった」と問題視している。子供たちが参加する鉄道イベントの安全管理態勢が問われそうだ。
JR東によるとトラブルがあったのは昨年11月23日、中野電車区(東京都中野区)で開かれたイベント「働く車両大集合!」。電車区構内に停車中の電車の運転台で、運転士体験をしていた幼児が誤って最大加速させる「フルノッチ」と呼ばれるハンドル操作をしてしまったという。
イベントでは電車のモーターに電気を流さない措置を講じていたが、何らかの理由で送電停止状態を解除するボタンが押され、動き出してしまったという。
電車は車輪とレールの間に設置された「手歯止(てばど)め」と呼ばれるくさび形の器具を約30センチ引きずり、車止めの約9メートル手前で停止した。
JR東は「電車区構内には保安装置がなく、自動で止まることはなかったが、運転士がすぐ(ハンドルを)ブレーキ位置にする対応をした」と説明した。
北海学園大の上浦正樹教授(鉄道工学)は「本来動いてはならない電車が動き出したのは問題だ。イベントでも二重三重の安全対策を講じるべきだ」と指摘した。