「仕掛けられたわな」
「これまでの生き方全部が間違っていたのか」「自分の過ちによって起こったこと」といった自責の念。
「(マスコミの)取材攻勢は殺意すら感じさせるものがあった」「張り巡らされた伏線によって仕掛けられた罠(わな)」などの恨み節。STAP細胞をめぐる騒動の主人公だった理化学研究所の元研究員、小保方晴子氏が28日、講談社から出版した「あの日」と題する手記には、一連の経緯についての謝罪から、被害者意識に満ちた反発まで、小保方氏の揺れ動く心情が赤裸々につづられていた。
小保方氏は前書きで「世間を大きくお騒がせしたことを心よりお詫(わ)び申し上げます」と謝罪。「私はここまで責められるべき悪人なのだと思うと、(中略)呼吸をすることさえ悪いことのように思えた」「これまでの生き方全部が間違っていたのか」「ただただ涙がこぼれた」と自責の念を吐露した。一見、すべてを明らかにして懺悔(ざんげ)するかのような印象を受ける。
ところが、続いて「人生をやり直すことができたとしても、私はやはり研究者の道を選ぶ」として一転、自らの立場を主張。「誰かを騙(だま)そうとして図表を作成したわけでは決してありません」「一片の邪心もありませんでした」と潔白を強調している。
>「調査する人達の線引き」
本編では、STAP細胞の研究から論文の発表、その後の騒動の経緯などを詳細に説明しながら、自らの心情を語っている。それらを通じてにじみ出ているのは、潔白の主張と被害者意識、そして論文の共著者であり実験などで指導を受けていた若山照彦・山梨大教授への不信感だ。
STAP細胞の疑惑が深まり、理研などの調査が進む過程について、「日を追うごとに、私個人に対するバッシングは過激さを増していった。この時すでに私は、私に対してなら、何をしても、何を言っても許される悪の象徴にされてしまっていると感じていた」として、“被害者”としての立場を訴えている。
また、「すでに、この混乱に乗じて誰を罰したいのか、調査する人たちの間で明確な線引きが行われているように感じられた」「まるで私が恣意的(しいてき)に細胞をすり替えたのではないか、と世間に邪推させるための最初の伏線が敷かれた」と自説を展開。「みんなで決めた悪には、どんなひどいことを言ってもやっても許される社会の残酷さ」と主張した。
「毎日記者の取材に殺意すら」
過熱報道を繰り広げたマスコミへの反発も大きい。小保方氏は「個人攻撃的な報道がどんどん流された」「真実が書かれた記事が果たしていくつあっただろうか」と強調。特に毎日新聞については、記者個人を名指ししたうえで、「取材攻勢は殺意すら感じさせるものがあった」「私のことを社会的に抹殺しようとしているように思えた」などと主張している。
疑惑が発覚してからの経緯については、「私がES細胞を混入させたというストーリーに収束するように仕組まれているように感じた」と自らの潔白を主張。若山氏がそれに加担していることを強くにおわせ、「研究室の中の細胞やマウスを研究室の主宰者である若山先生が知らないはずはない」とした。
(産経新聞)