日本相撲協会の全親方衆が集う「年寄総会」が28日に行われ、総合企画部長を務める協会No・3の貴乃花親方(元横綱)が猛反発していた八角理事長(元横綱・北勝海)の新任評議員人事案が白紙撤回になった。貴乃花親方の主張に同調する意見が親方衆から続出した。また、理事長と同じ高砂一門の九重親方(元横綱・千代の富士)が29日の新理事候補選挙への立候補取りやめを決定。八角体制にとっては予想外の逆風となり、3月の理事長改選では貴乃花親方を推す声がさらに高まる可能性も出てきた。
貴乃花親方が真っ向から反論した八角理事長による“強行人事案”。本来であれば、全親方衆によるこの日の年寄総会で提案や説明を行うはずだったが、理事長の口から最後まで話題にすることはなかった。
事の発端は21日の評議員会の会合。協会の最高決定機関ともいえる評議員会の新しいメンバーに八角理事長が自身と同じ高砂一門の元親方を推薦。極めて重要な事案を密室で決めようとした理事長に対し、貴乃花親方が異論を唱えた上で年寄総会の承認が必要であると要求した。それから1週間。親方衆からの反発は必至の状況だったこともあってか、理事長は人事案についての提案をあらかじめ取り下げ、会合で元親方の名前を出すこともなかった。実質的な白紙撤回だった。
年寄総会の出席者によると、一部の親方から理事長に対し「同門の先輩を入れることを軽く考えてはいけません」「元親方が評議員に入ることをきっかけに現役が減るじゃないか」などといった趣旨の意見が出たという。もともと、評議員会は昨年急逝した北の湖前理事長時代に「外部有識者4人、力士出身者3人」という枠組みを固めた。それだけに、別の親方から「現役親方3人でいいじゃないか。北の湖理事長の考えを忘れたのか」と貴乃花親方に同調する意見も飛び出したという。年寄総会後、理事長は新任評議員候補について「後日、話し合って年寄会から推薦しようとなった。きょうからスタート。慌てなくていい」と“元親方案”を撤廃し、現役親方から選ぶ方針に変更。結果的には貴乃花親方の反論によって覆された形となった。
一方、29日の新理事候補選挙を前に九重親方が立候補を取りやめるという出来事もあった。同じ高砂一門に所属する理事長にとって、3月28日の理事長改選(10人の理事の互選で決定)に向け貴重な1票を失った形だ。それは、若手親方を中心に協会トップに推す声が根強い貴乃花親方にとってはプラスとなることを意味する。この日は近寄る報道陣を手で制し、無言を貫いた貴乃花親方。2カ月後、北の湖前理事長の遺志を継ぐのは誰か。平成の大横綱に追い風が吹き始めたと言っても過言ではない状況となってきた。
▽理事長選出までの流れ 29日の理事候補選挙の当選者10人は春場所千秋楽翌日の3月28日の評議員会で選任される。同日に新理事会が開かれ、理事長を互選する。新体制での外部理事は同29日、各親方の新しい職務は同30日に決まる。
(スポニチアネックス)