ブラジル人MFテシェーラ
春節(旧正月、今年は2月8日)の大型連休中、日本を訪れる中国人観光客の“爆買い”が再び話題を集めているが、中国のサッカークラブもまた、移籍市場で金満ぶりを発揮している。今冬、中国のクラブが外国人選手獲得に投じた金額は5日の時点で2億5890万ユーロ(約329億円)と、イングランド・プレミアリーグを超えたが、「払い過ぎ」と揶揄する向きもある。
■「払い過ぎ」と揶揄
これまで中国は、ブラジルなど南米クラブからの選手補強が目立っていた。今冬はその触手を欧州に向け、名門クラブとの争奪戦も辞さない構えだ。
1月27日、中国スーパーリーグ(1部)の江蘇蘇寧が、移籍金2800万ユーロ(約36億円)で、プレミアリーグのチェルシーからブラジル人MFのラミレスを獲得した。
2月3日には、アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)を制した広州恒大が、中国スーパーリーグ史上最高額となる4200万ユーロ(約53億円)で、スペイン1部リーグ、アトレチコ・マドリードに所属していたコロンビア代表FWジャクソン・マルティネスを獲得した。
その2日後、江蘇蘇寧はウクライナ1部リーグ、シャフタール・ドネツクのブラジル人MFテシェーラと4年契約を結んだ。移籍金は広州恒大の“記録”を800万ユーロ(約10億円)上回る5000万ユーロ(約64億円)。プレミアリーグの名門リバプールとの争奪戦を制したとされる。
“爆買い”はまだ続く。江蘇蘇寧はかつてプレミアリーグのマンチェスター・シティーでプレーした元ブラジル代表FWジョーも獲得。トルコの強豪ガラタサライに所属するオランダ代表MFスナイデルにも、年俸700万ユーロ(約9億円)、移籍金1600万ユーロ(約20億円)のオファーを出したという。
■際立つ「鑑識眼」の低さ
中国のネットメディアが仏紙の報道として伝えたところでは、上海申花もフランス1部リーグ、パリ・サンジェルマンのFWエセキエル・ラベッシに年俸1000万ユーロ(約13億円)を提示した。
さらに、同じパリ・サンジェルマンに所属するスウェーデン代表FWイブラヒモビッチの獲得も目論み、年俸1800万ユーロ(約23億円)の超高額オファーを出したとも伝えられている。中国の移籍市場は今月26日まで開いており、さらなる衝撃があるかもしれない。
もっとも、中国クラブの“爆買い”は脅威と受け止められる一方、冷ややかな目も向けられている。スイスのスポーツ研究機関CIESが最近、公表した今冬の移籍市場での「払い過ぎ」ランキングでは、広州恒大に移籍したジャクソン・マルティネスが1位、江蘇蘇寧が獲得したラミレスが2位と、中国クラブが上位を占めた。
CIESは、選手の年齢や国際的評価、契約期間など多くの要素を総合して「適正価格」を弾き出している。それによると、ジャクソン・マルティネスの適正価格は1820万ユーロ(約23億円)。広州恒大は2380万ユーロ(約30億円)も過払いしたというのだ。
ラミレスの適正価格は1720万ユーロ(約22億円)とされ、江蘇蘇寧も1080万ユーロ(約14億円)も払い過ぎているといい、手当たり次第に外国人選手を買い漁っている中国クラブの“鑑識眼”の低さが際立っている。
■見果てぬ習主席の夢
中国のネットメディアは韓国メディアを転載する形で、「スター選手の獲得は中国選手の実力向上に役立っていない。攻撃は外国人選手が担い、中国人選手は後方で補助的に支えるだけだ。スーパーリーグの観客は多くなるかもしれないが、リーグにとっては毒薬になる可能性がある」と指摘。その上で、「中国のワールドカップ(W杯)出場、中国でのW杯開催、中国のW杯優勝という習近平国家主席の夢は、習氏の任期が終わる2022年までに見ることはできないだろう」としている。
中国のインターネット上でも、「中国スーパーリーグはすでに理性を失っている。金持ちが財産の比べ合いをしており、中国サッカーに災いが降りかかる。一時は興奮するが、後顧の憂いが絶えない。カネを湯水のように使っても問題は解決できない」といった悲観論が出ている。