(韓国の犯罪映画)
韓国では、暴力団に関するニュースが頻出している。最近も、昨年11月に江原(カンウォン)で凄惨な流血事件が勃発していたことが明らかになったばかり。総勢29人の男たちが明け方の駐車場を舞台に、バットや角材のみならず、斧や刀まで持ち出しての大乱闘を始めたのだ。まるでヤクザ映画のワンシーンのようだ。
事件の様子は駐車場に備え付けられた監視カメラによって一部始終が録画されていて、事件から3カ月がたった2月17日、乱闘参加者17人を一斉検挙。逃げ延びた12人の行方は、現在も追跡中だ。
一般人への迷惑を顧みない問題行為だが、実際には、韓国における暴力団の数は減少傾向にあるという。
昨年9月時点で、韓国警察が把握する国内暴力団の数は213組であり、構組員は5,342人。日本の約2万2,300人(2014年度/警察庁発表)と比べて4分の1ほどと、意外に少ない。
また、韓国刑事政策研究院が発表した資料によると、彼らの稼ぎも実に少ない。月に500万ウォン(約50万円)以上稼ぐことができるのはわずか20.8%で、36.6%が月収100万ウォン(約10万円)を切る、厳しい経済状況なのだ。
さらに、新人の場合はもっと悲惨だ。給料の支払いは、微々たる“情熱ペイ”方式。これは、経験を積ませるという名目で先輩の仕事を手伝わせ、一般社会の最低賃金をも下回る給料しか与えないという搾取の構図だ。多くの下っ端組員は、一般人への恐喝などで生活をするしかないのが実情といえるだろう。
その結果、暴力団に入った組員の多くが抱く感想が「映画やドラマと違う」というものであり、逃げ出す者も後を絶たない。しかし、簡単に辞めることも許されない。
実際、2月11日には組から足を洗おうとしたキム氏(25)をバットで殴打するなどのリンチを加えた容疑で、同じ組のチョン容疑者(29)と取り巻き3人が拘束されている。
事件は、刑務所に収監されていたキム氏が、出所と共に足を洗おうと再就職先を探していたことに端を発する。キム氏はカタギの道に進むことを組に報告するのだが、彼に与えられたのは祝福ではなく、暴力だった。
チョン容疑者はキム氏の意思を聞くと、「脱退する組員は、ケジメをつけなければならない」としてバットで殴りかかり、彼の顔や頭に全治4週間のケガを負わせたのだ。さらに、身の危険を感じたキム氏が逃走すると、組員を動員してその行方を追わせるなど、執念を燃やしたという。
韓国でもヤクザ映画は人気ジャンルのひとつだが、創作の世界と現実は、天と地ほどの差があるようだ。
(日刊サイゾー)