3月相場入りした株式市場で注目されるのは、米大統領選の民主、共和両党の指名争いのヤマ場、スーパーチューズデーだ。共和党で実業家のドナルド・トランプ氏が圧勝するとの予測も出るなか、「トランプ大統領」が誕生すれば円高と株安が急加速するとの観測もあり、市場は戸惑いを隠さない。
1日のスーパーチューズデーでは各党11州ずつで予備選や党員集会が開かれる。事前の予測では民主党はヒラリー・クリントン前国務長官、共和党はトランプ氏が優勢で、大勝すれば指名獲得に大きく近づく。
「トランプ氏がここまで来るとは市場は予想していなかった。トランプ氏が大統領になれば円が買われるリスクが高い」と指摘するのはニッセイ基礎研究所専務理事の櫨(はじ)浩一氏。
トランプ氏は保護貿易主義を唱え、「大統領に就任した初日に中国を為替操作国に認定する」と明言、日本に対しても「円安誘導は許さない」と発言している。
何よりも市場が警戒するのは、トランプ氏の具体的な政策が未知数なところだ。櫨氏は「TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)を破棄すれば世界経済全体にも悪影響を与える」と懸念を示す。
一方、クリントン氏をめぐっては、地方紙への寄稿で「日本の円安誘導を批判した」と報じられた。ただ、英語の原文ではほとんどが中国の為替政策や市場原理に基づかない経済を批判しており、「日本(Japan)」という言葉は1回しか出てこない。
前出の櫨氏は「現段階ではクリントン氏がトランプ氏との一騎打ちになった場合、クリントン氏が勝つとの見方が優勢で、市場への影響は限定的だ。しかし、両候補とも選挙民に受けるためにポピュリズムに走る可能性があり、どちらにしても円高圧力が強まる」と語る。
一方、株式評論家の植木靖男氏は「民主党でウォール街解体を唱えているバーニー・サンダース氏が勝てば間違いなく株は売られるが、トランプ氏も本当に大統領になれば、日本に厳しいことは言わなくなるだろう」と楽観的だ。
カブドットコム証券投資ストラテジストの河合達憲氏も「トランプ氏が大統領となったら、下馬評と変わってくるだろう。強いドルを打ち出してもおかしくない」とみる。
いずれにせよ、トランプ氏が市場での存在感を増しているのは間違いない。